疾患を疑うポイント
●高齢者にみられる脳葉限局性の脳出血(皮質微小出血を含む)では本症を疑う.
▼定義
脳血管にアミロイドが沈着した病態を脳アミロイドアンギオパチー(CAA)(脳アミロイド血管症)とよぶ.
▼病態
くも膜下および大脳・小脳皮質の血管へのアミロイド沈着に伴い,血管の機能障害や構造変化(内膜のヒアリン性肥厚,血管壁の断裂・重複化,微小動脈瘤様拡張,フィブリノイド壊死)が起こる.その結果,出血性病変,虚血性病変を生じる.出血性病変には脳葉型脳内出血,皮質微小出血,皮質脳表ヘモジデリン沈着症(cortical superficial siderosis:cSS)〔円蓋部くも膜下出血(convexity subarachnoid hemorrhage:cSAH)〕があり,虚血性病変には白質脳症,皮質微小梗塞がある.まれに血管アミロイドに対する炎症が起こりCAA関連炎症あるいは血管炎とよばれる.CAA関連血管障害やAlzheimer(アルツハイマー)病(Alzheimer disease:AD)の合併により,認知障害がしばしばみられる.
▼疫学
65歳以上の高齢者の約半数にはCAAがみられ,加齢とともに増加する.ADでは約90%にCAAがみられる.CAA関連脳出血の有病率は55歳以上の人口10万あたり7.5人である.
▼分類
脳血管に沈着するアミロイド蛋白質の種類によって分類される.高齢者やAD患者でしばしば認められるのはアミロイドβ蛋白質(Aβ)が沈着するAβ型CAAである.ほとんどは孤発性であるが,まれにAβ前駆体蛋白質遺伝子変異による遺伝性CAA(オランダ型など)がある.
▼診断
➊病歴および症候上の特徴
CAA関連脳出血は脳葉型の脳内出血を特徴として,意識障害,片麻痺,視野障害,失語などの神経症候,頭痛ほかを呈する.出血の誘因には,血栓溶解療法,抗血小板・凝固療法,脳外科手術