▼定義
くも膜下出血(subarachnoid hemorrhage:SAH)後4~14日目(あるいはそれ以降)に破裂脳動脈瘤近傍を中心に生じる主幹脳動脈内腔(脳血管造影で描出可能な太い動脈)の可逆性狭小化である.
▼病態
本態はSAHが原因で多因子性に生じる持続性かつ可逆性の異常血管平滑筋収縮である.重篤例では血管壁のリモデリングを伴い,血管拡張薬があまり効かない.症候化には側副血行不良,皮質小動脈や穿通枝動脈のれん縮(微小循環障害),れん縮動脈の内皮障害と血小板血栓の付着,過呼吸や脱水などが関与する.重篤例では脳梗塞の原因になるが,SAH後3週以上経過すると,脳血管れん縮自体は自然回復する.
▼疫学
発生頻度は脳血管造影上では約70%,SAH患者の約20%で虚血症状,約10~20%で脳梗塞の原因となり,約80%はSAH後3週以内に生じる.
▼診断
脳動脈径の評価が必須である.
➊脳動脈収縮の診断
非侵襲的補助検査として経頭蓋ドプラ検査(transcranial Doppler:TCD)が有用で,連日,中大脳動脈水平部の平均血流速度を測定し,120~150cm/秒以上,あるいは1日に50cm/秒以上の増加を認めた場合,脳血管れん縮を疑う.確定診断は脳血管造影,3D-CT angiographyやMR angiographyで行う(図10-7図).脳動脈径が50%以上縮小していれば,症状の有無に関係なく脳血管れん縮と診断する.
➋遅発性脳虚血(delayed cerebral ischemia:DCI)による症状悪化
米国脳卒中協会診療指針では,SAH後に生じる1時間以上持続する脳虚血に起因すると考えられる神経症状を,脳血管れん縮の有無に関係なくDCI(による症状悪化)と診断する.ただし,標準的な画像,電気生理,血液検査で治療合併症を含む他原因を除外する必要がある(図10-8図).こ
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