疾患を疑うポイント
●中年~高齢者に多い.
●突然の片麻痺,構音障害,失語症などで発症し,基礎疾患に心房細動などの不整脈や心疾患を伴う.
学びのポイント
●高齢化に伴い心房細動の有病率は増加していくため,心房細動を第一の原因とする心原性脳塞栓症は,超高齢社会で最も頻度が高くなりつつある脳梗塞の病型である.
●臨床的には予兆なく突然重症な神経症状を呈することが多く,一般に自然経過における生命予後・機能予後は不良である.
●一方で,発症4.5時間以内には血栓溶解療法の適応があり,それ以後でも血管内血栓除去術が可能な場合があり,これらにより血流が再開通した場合は劇的に予後が改善するため,緊急の対応がきわめて重要な疾患である.
●一定時間後に再開通した場合には出血性梗塞となりやすく,予後不良の一因となる.
▼定義
脳血管が閉塞することで生じる虚血性脳血管障害のうち,心臓に原因があって形成された心内血栓が血流によって脳血管に運ばれて血管を閉塞する疾患である(図10-12図).
▼病態
原因となりうる心疾患は,心内血栓を形成するリスクや頻度が異なる.中等以下のリスク疾患しか見当たらない場合,心原性脳塞栓症以外の病態の除外が必要である.
➊不整脈
心房細動により左心房の一部である左心耳の血流がうっ滞すると血栓が形成される.発作性心房細動では脳梗塞発症時に不整脈を認めないこともあるので入院後の心電図モニターに注意する.また洞不全症候群も高リスクである.
➋弁疾患
人工弁のうち機械弁は血栓が形成されやすいため,しっかりとした抗凝固療法にて予防する必要がある.
➌心筋障害
心筋梗塞の発症早期は心筋の運動障害や内腔の内皮機能異常をきたし心内血栓が形成されやすい.また左心室のうち特に心尖部の無動は血流うっ滞をきたしやすく血栓が形成される.
➍その他の心疾患
心房粘液腫や感染性心内膜炎では通常の血栓とは異なる塞栓子が血管を
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