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治療

3 もやもや病
moyamoya disease
峰晴 陽平
(京都大学大学院・脳神経外科学)

疾患を疑うポイント

●小児を含めて若年性の脳卒中では,もやもや病を鑑別に挙げる.

●幼児では涕泣時,学童ではリコーダーを吹く,走るなど過呼吸の状態で脱力発作を起こしやすい.

学びのポイント

●小児の脳卒中の主要な原因の1つである.

●小児発症では虚血性脳卒中が多く,成人発症では出血性脳卒中が多い.

▼定義

 Willis(ウィリス)動脈輪の進行性の閉塞とそれを代償するために発達したもやもや血管(側副血行路)を特徴とする原因不明の脳血管疾患.

▼病態

 脳の主幹動脈の閉塞により脳虚血をきたす.側副血行路としてもやもや血管の発達を認める.傍脳室の側副血行路は脆弱で,動脈瘤などが形成され,出血の原因となる.RNF213遺伝子変異が患者の8割に認められる.

▼疫学

 東アジア,特に日本で患者数が多い.罹患率は年間10万人あたり0.54である.女性に多く(男性の1.8倍),10歳以下を中心とする小児発症と30~40歳代を中心とする成人発症の二峰性を示す.家族歴は10~12%に認められる.

▼診断

臨床症状

 一過性脳虚血発作,脳梗塞,脳出血により麻痺や失語を呈する.てんかんや頭痛を認めることもある.無症候で偶然に発見されることもある.小児発症では虚血型が多く,成人発症では出血型が多い.

画像

 脳血管撮影において,①頭蓋内内頸動脈終末部を中心とした領域に狭窄または閉塞がみられることと,②その付近に異常血管網(もやもや血管)が動脈相においてみられることで診断する.脳血管撮影により診断を行うが,1.5テスラ以上のMRIでも診断可能である.

▼治療

‍ 血行再建術が基本となる.頭蓋外動脈と頭蓋内動脈を直接吻合する直接血行再建術と,硬膜枝,筋肉,骨膜を脳表と接触させることで吻合を促す間接血行再建術がある.直接血行再建術でよく用いられるのが,浅側頭動脈-中大脳動脈吻合術(STA-MCAバイパス術)である.

▼予後

 血行再建術に

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