診療支援
治療

7 PRES,高血圧性脳症
posterior reversible encephalopathy syndrome(PRES),hypertensive encephalopathy
北口 浩史
(倉敷中央病院・脳神経内科部長)

疾患を疑うポイント

●急激な血圧上昇・変動,子癇,腎障害,輸血,免疫抑制薬・抗がん剤の使用などの背景因子.

●突然の頭痛,意識障害,けいれん,霧視などの視覚障害など神経症状が出現したときに疑う疾患.

学びのポイント

●内科だけでなく,救急,外科,産婦人科領域でも遭遇する疾患である.

●MRIなどの画像検査にて,脳の後方優位の脳浮腫.

●早期診断が重要であり,すみやかに治療すると,臨床症状,画像所見が改善する症候群.

▼定義

 PRESは,1996年Hincheyに提唱された疾患概念.頭痛,意識障害,けいれん,視覚障害などの症状があり,画像検査にて,左右対称性に後方優位の皮質下白質主体の浮腫を認める.治療により臨床症状,画像所見が改善する症候群である.高血圧性脳症〔第3章のも参照〕は急激な血圧上昇を伴い,脳浮腫を生じ,昏睡,脳出血,死亡に至る.画像検査が乏しかった時代の疾患概念である.定義は異なるが,PRESの原因の1つとして高血圧性脳症があり,2つの疾患の一部は重複する病態と考えられる.

▼臨床症状

 主症状は,頭痛,けいれん,意識障害,視覚障害である.その他,歩行障害,体幹失調,片麻痺などを生じる.意識障害の程度は,傾眠から昏睡まであり,視覚障害は,霧視,視力低下,半盲,皮質盲など多彩である.

▼病態・病理

 PRESを生じる要因としては,高血圧性脳症や,子癇,敗血症,自己免疫疾患,免疫抑制薬,抗がん剤などの薬剤がある.PRESの病態は不明であるが,急激な血圧上昇・変動やサイトカインの作用で血管内皮傷害が生じ,血液脳関門の破綻をきたし,脳浮腫を生じる.脳血管への交感神経の支配が重要であり,内頸動脈系に比して椎骨・脳底動脈系では疎であるため,血圧が急上昇した際に椎骨・脳底動脈領域の過灌流が生じやすい.

▼診断

 典型的なPRESの画像所見は,頭頂葉や後頭葉の皮質下白質を主体に,左右対称性に頭部CT上

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