▼病態
嚥下障害のために食物残渣や口腔内常在菌,あるいは胃酸を含む逆流した胃内容物が,下気道に流入して発症する.嚥下反射や咳反射が低下し,主に夜間に少量の口腔・咽頭内容物の不顕性誤嚥を繰り返して発症するものが大半である(通常型の誤嚥性肺炎).また意識障害時などに大量に吐物を吸引して発症する,胃酸による化学性肺炎もある〔Mendelson(メンデルソン)症候群〕.脳卒中後の死亡に密接な関係があるのが誤嚥性肺炎〔第2章の→も参照〕と窒息である.
不顕性誤嚥の危険因子は,低栄養,寝たきり状態,胃食道逆流,口腔内の不衛生状態などである.また,睡眠薬,向精神薬,抗けいれん薬,抗コリン薬なども,意識障害や嚥下反射を低下させて不顕性誤嚥の原因となる.
主な症状は発熱,咳嗽,粘稠痰,頻呼吸などであるが,高齢者では活動性の低下,食欲不振,意識障害,夜間せん妄といった非特異的な症状を呈することがある.
▼治療・予防
抗菌薬治療については「医療・介護関連肺炎診療ガイドライン」にそって行う.口腔内常在菌や嫌気性菌の関与が強いため,β-ラクタマーゼ阻害薬を含むペニシリン製剤を用いるが,肺炎治療中も誤嚥を繰り返している可能性が高いことに留意すべきである.
予防には,口腔ケア,姿勢調節,栄養管理,嚥下訓練および薬物療法が推奨される.
➊口腔ケア
食物残渣,歯垢,舌苔などのブラッシングによる機械的な除去,就寝前のうがい,口腔内の保湿などを行う.口腔内の常在菌が減少し,咳反射の閾値が低下することで不顕性誤嚥による肺炎が減少する.
➋姿勢調節
長時間の坐位保持が困難な場合や経管栄養の施行も,胃食道逆流による誤嚥性肺炎の危険因子となる.30度仰臥位,頸部前屈などの安定した姿勢で食事を行い,食後1~2時間は横にならず,就寝時も上半身の軽度挙上を検討する.
➌栄養管理
低栄養は脳卒中の予後不良因子であり,摂食不能あるいは誤