▼定義
脳症の臨床所見である急性発症の意識障害と内臓,特に肝臓の病理所見である脂肪変性を中核として形成された臨床病理学的概念である.本症候群はインフルエンザ,水痘などのウイルス感染症に続発し,時にアスピリン,バルプロ酸などの薬物,アナフィラトキシンなどの毒物により誘発される.
▼病態
病態の中心は,肝ミトコンドリア代謝の一過性障害である.なかでも脂肪酸代謝異常が重要で,これに基づく二次的異常が糖新生,尿素サイクル,ケトン体産生,クエン酸サイクルなどさまざまな代謝経路に派生する.
▼疫学
米国で1970年代に本症候群が多発し,症例数は年間数百例に及んだ.しかし,その後アスピリン使用頻度の減少とともに激減した.わが国ではもともと罹患率が低く,年に十数例程度であったが,近年さらに減少している.
▼症状
典型例は5歳以上の年長児で,ウイルス感染症の発熱がいったん解熱したのち,嘔吐や意識障害などで発症する