▼病態
成人では椎間板腔に血行がないので,通常骨成分への血行性感染から椎間板炎が続発する.小児期には血行性椎間板炎として発生しうる.その場合や手術操作などから椎間板炎が生じた場合,炎症は近接する骨へ波及しうる.感染経路として,感染巣から静脈を逆流して播種する静脈説と椎体終板付近に豊富な細動脈の感染性閉塞による病巣形成という動脈説がある.腰椎に最も多く,胸椎,頸椎の順でまれになるが,軸椎例もある.
▼疫学・起因菌
まれな疾患であるが,近年,高齢化や血管内処置・脊椎手術の増加により漸増しており,発生率は人口10万人に2~6人である.70歳代が最も多く,男性優位である.原因となる感染巣には泌尿生殖器,皮膚や軟部組織(褥瘡),呼吸器,感染した静脈カテーテル,術後感染,心内膜炎,歯槽膿漏などがある.くも膜下や硬膜下,椎間板腔への刺入も原因になる.
起因菌は単一であることが多いが,最近では複合感染も10%以下にみられる.半数は黄色ブドウ球菌であり,近年耐性菌のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA)が増加している.次に腸内グラム陰性桿菌(特に泌尿器科的操作後),緑膿菌やカンジダ(特に血管内膿瘍や不法薬物注射に関連),レンサ球菌(特に糖尿病患者)などが続く.最近では弱毒菌が増加し,同定できない例も多い.
▼症候・診断
最も目立つ症状は腰背部痛ないし頚部痛である.持続的な安静時痛があり,体動で増強する.当初は臥位で改善するが,その後は夜間・臥位で増強する.発症様式により,急性型(激しい疼痛,高熱,脊柱可動域制限で発症),亜急性型(微熱を伴い発症),慢性型(発熱がなく,疼痛も潜行性に発症)に分けられる.初診までに1~3か月要することが多い.椎間の不安定性や椎間板の後方脱出,後方に波及して硬膜外膿瘍が生じれば,
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