▼定義
1970年代に米国のコネチカット州ライム地方で小児に流行した関節炎(ライム関節炎)が,Ixodes属マダニが媒介するBorrelia burgdorferiによる感染症であることが明らかにされたのが始まりである.春から夏にかけての発病が多く,ヨーロッパからアジアにかけての温暖な森林地帯や北アメリカの北東部,北中央部,太平洋沿岸地域など,世界に広く蔓延する人獣共通感染症である〔第11章の→も参照〕.
▼病態
ライム病は全身性の疾患であり,皮膚や関節,循環器,神経などに多様な症候を呈する.第1期(局在期)には媒介するマダニの咬傷周辺に慢性遊走性環状紅斑(erythema chronicum migrans:ECM)がみられライム病に特徴的とされる.このほか,疲労や発熱,悪寒,頭痛,頸部痛,筋肉痛,関節痛などのインフルエンザ様症状を呈する.第2期(播種期)に入ると,Borreliaが血行性に播種し臓器症状が出現する.房室ブロックなどの不整脈や心膜炎,心筋炎などの循環器症状や,再発性髄膜炎や顔面神経麻痺,神経根炎,末梢神経炎などの神経症状がみられる.このほか,皮膚や関節炎,筋肉炎など多彩な症状がみられる.第3期(慢性期)には慢性萎縮性肢端皮膚炎や慢性脳脊髄炎,慢性関節炎を呈する.Borreliaは皮膚病巣や心臓,血液,髄液から検出され,抗原抗体複合体の沈着が,回帰性の関節炎や神経障害の原因の1つと考えられている.
▼疫学
日本では,輸入例も国内感染例もみられるが,国内例では,B. gariniiやB. afzeliiによって発症する.国内例では媒介するシュルツェマダニ(I. persulcatus)やヤマトマダニ(I. ovatus)の分布に対応し,主に本州中部以北で患者発生がみられる.ヒトからの直接感染はない.米国ではB. burgdorferiによる,欧州ではB. burg
関連リンク
- 新臨床内科学 第10版/4 ライム病
- 治療薬マニュアル2024/アモキシシリン水和物《サワシリン パセトシン ワイドシリン》
- 今日の治療指針2023年版/ボレリア感染症(回帰熱,ライム病) [■4類感染症]
- 臨床検査データブック 2023-2024/スピロヘータ類 ボレリア・ブルグドルフェリ抗体《ライム病診断》
- 臨床検査データブック 2023-2024/麻疹ウイルス抗体 [保]*
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- 臨床検査データブック 2023-2024/ハンセン病
- 新臨床内科学 第10版/26 西ナイル熱
- 今日の診断指針 第8版/ボレリア感染症(回帰熱・ライム病)
- 今日の小児治療指針 第17版/ポリオおよびポリオ様麻痺