診療支援
治療

(2)HIV関連神経認知障害
大谷 良
(国立病院機構京都医療センター・脳神経内科診療科長)

疾患を疑うポイント

●HIV感染症はウイルスの持続感染の結果,細胞性免疫機能不全を引き起こす.HIV感染者で,中枢神経系の障害がみられた場合,HIV脳症(認知症または亜急性脳炎)を疑うべき.

▼定義

 AIDS患者にみられるHIV感染に伴う神経認知機能障害を総じて,HIV-associated neurocognitive disorders(HAND)と定義する.

▼病態

 HANDは,HIVに対する多剤併用療法:抗レトロウイルス療法HAART(highly active antiretroviral therapy)が導入されたにもかかわらず,HIV感染症例の半数近くに認知機能低下が認められたことから研究が進められている.症状は多彩で,言語,注意,作業記憶,抽象的思考,遂行機能,記憶,情報処理,感覚認知,運動技能などに影響が出る.

▼疫学

 2010年の大規模コホート研究を参考にすれば,無症候性神経認知障害(asymptomatic neurocognitive impairment:ANI)が33%,軽度神経認知症(mild neurocognitive disorder:MND)が12%,重度の認知機能障害をきたしたHIV関連認知症(HIV-associated dementia:HAD)が2%と報告された.近年,HADは治療法の確立で減少しているが,ANI,MNDは増加している.

▼分類

 重症度により,①重度の認知機能障害を呈するHIV関連認知症(HAD),②認知機能障害が軽度にとどまる軽度神経認知障害(MND),③神経心理検査では認知機能障害が認められるが,日常生活では無症候の無症候性神経認知障害(ANI)の3型に分類される.

▼診断

 HANDの診断は,血清学的にHIVに罹患したことを証明したうえで,複数の神経心理検査の組み合わせによる評価と日常生活への影響に基づいてなされる(表

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