診療支援
治療

6 痙性斜頸
spasmodic torticollis,cervical dystonia
目崎 高広
(榊原白鳳病院・診療顧問)

疾患を疑うポイント

●頭部を正しい位置に保てないという主訴で来院することが多い.

学びのポイント

●痙性斜頸は局所性ジストニアの一型であり,近年では頸部ジストニア(cervical dystonia)と呼称される.頭部の回旋・側屈・前後屈などさまざまな異常姿勢をとり,半数以上で痛みを伴う.

●斜頸はジストニア以外でも生じる.ほかの原因による斜頸を鑑別する必要がある.

▼定義

 脳の運動調節障害として,頭部を支える頸部筋の収縮と弛緩とが本来のバランスを失い,頭位の維持と頭部の随意運動とが困難になる疾患である.

▼病態

 頸部筋の不随意収縮により頭位の保持や頭部の運動(上下左右を向く)が妨げられる.頭位偏倚(頭部が異常な向きで固定される),頭部の不随意運動,頭部の運動制限,頸部~上背部の疼痛のうちいくつかを呈する.症状は患者によって異なるが,個々の患者では固有である(定型性).安静によって一時的に改善し,逆に歩行などの運動によって増悪することが多いが,例外もある.頰に触れるなど,特定の感覚刺激で一時的に症状が変動(多くは改善)することが多い(感覚トリック).

▼疫学

 人口10万人につき数人程度とする報告が多いが,明らかに過小評価である.平均発症年齢は40歳前後で,海外では女性に多いが日本ではわずかに男性に多い可能性がある.

▼診断

 頭部を正面に保つことが難しい場合に疑う.大部分は特発性で,一部は遺伝性である.また,脳性麻痺や頭部外傷などの脳損傷,ほかの神経変性疾患などで起こる場合がある.抗ドパミン薬などによる薬剤性ジストニア(急性ジストニアまたは遅発性ジストニア)としての発症も少なくない.乳児の先天性筋性斜頸のほか非ジストニア性の斜頸をきたす種々の病態があり,鑑別が必要である.なお頭部のみの振戦(頭部振戦)はかつて本態性振戦の一型とされたが,上肢に振戦がない場合には痙性斜頸の一型と考えられる.

▼治

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