疾患を疑うポイント
●発作性の四肢の脱力をきたし,下肢から上肢に広がるが,麻痺の程度は下肢のみといった限局性筋力低下から完全四肢麻痺まで幅がある.その一方で,眼球運動障害や顔面・嚥下・呼吸筋の麻痺はあまりみられず,感覚や膀胱直腸障害を伴わないことが特徴.
●甲状腺機能亢進症に伴うものが有名.
学びのポイント
●下肢近位筋優位の筋力低下を繰り返し,脳神経や呼吸は保たれる.
●発作時の治療は血清カリウム値により異なる.
●前日の過剰な運動や飲酒,炭水化物の過剰摂取が誘因となる.
●若年男性では甲状腺機能亢進症に伴うことがしばしばある.
▼定義
発作性の骨格筋筋細胞膜の興奮性異常により脱力・麻痺をきたす疾患で,血清カリウム値の異常を伴うことが多い.脱力発作は下肢近位筋から上肢に広がるが,麻痺の程度は下肢のみといった限局性筋力低下から完全四肢麻痺まであり,その持続は1時間未満から数日まである.発作頻度も毎日から生涯に数回までとかなり幅がある.眼球運動障害や顔面・嚥下・呼吸筋の麻痺はあまりみられず,感覚や膀胱直腸障害はない.
▼病態
遺伝性のものは骨格筋細胞膜イオンチャネルの変異によるチャネル病であることが明らかとなっている.常染色体優性遺伝を示し,骨格筋型カルシウムチャネルαサブユニット(CACNA1S)や骨格筋型ナトリウムチャネルαサブユニット(SCN4A)の遺伝子異常が原因となる.
特殊なタイプとして周期性四肢麻痺に不整脈〔QT(U)延長〕と骨格奇形を合併するAndersen-Tawil(アンデルセン-タウィル)症候群がある.
▼疫学
正確な患者数は不明だが,遺伝性周期性四肢麻痺は全国で1,000名程度と推定されている.
▼分類
発作時の血清カリウム値から,低カリウム性,高カリウム性に分類され,それぞれ遺伝性(家族性)とほかのホルモン異常などが原因となる症候性に分類される.高カリウム性は低カリウム性