診療支援
治療

1 ナルコレプシー
narcolepsy
立花 直子
(関西電力病院・睡眠関連疾患センター・センター長)

疾患を疑うポイント

●強い眠気があり,通常ならありえないような場面で眠ってしまう.

●強い眠気の初発時期は,通常思春期までさかのぼれる.

学びのポイント

●日中の耐えがたい眠気と繰り返し起こる居眠りとが症状の中心.

●眠気のために学業や就労が困難になることも多く,大きくQOLが損なわれる.

●確実にカタプレキシー(情動脱力発作)があることを聞き出せれば,臨床診断が可能.

▼病態

 家族性ナルコレプシー犬やプレプロオレキシン遺伝子ノックアウトマウスの研究により,オレキシン産生や伝達異常によってヒトナルコレプシーと同様の症状が起こることが明らかになった.オレキシンは摂食,体温,睡眠といった基本的な生理機能を制御している神経ペプチドであり,前駆体のプレプロオレキシンからオレキシンAとBが産生される.一方,ヒトでは約95%が孤発例であり,遺伝子異常では説明がつかないが,ナルコレプシー患者の脳脊髄液中のオレキシンA濃度が定量限界以下に低下していることから,なんらかの機序で(自己免疫によるオレキシン神経細胞の破壊が有力とされている)オレキシン神経が脱落し,モノアミン神経系による覚醒の維持が不十分となると考えられている.またコリン作動性神経系によるレム睡眠の制御機構にも障害が及ぶため,後述するカタプレキシー,睡眠麻痺,入眠時幻覚といったレム睡眠関連症状が出現すると説明されている.

▼疫学

 わが国の有病率は,0.16~0.18%とされているが,大規模な疫学調査はなされておらず,正確なところは不明である.

▼症状と診断

 ①日中の過度の眠気,②カタプレキシー(情動脱力発作):感情の動き(例:喜んだとき,驚いたとき,怒ったとき)によって誘発される全身もしくは身体の一部に起こる脱力発作,③睡眠麻痺:睡眠途中に自覚的には目覚めているが身体を動かそうとしても動けなくなる(いわゆる金縛り),④入眠時幻覚:就寝直後の入眠期に

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