診療支援
治療

3 けいれん性てんかん重積状態
spastic status epilepticus
松本 理器
(神戸大学大学院教授・脳神経内科学)

疾患を疑うポイント

●全身のけいれん発作が5分以上続いた場合は,自然に発作が止まらない状態,すなわち,てんかん重積状態と診断される.

●けいれんが止まっても意識障害が遷延化する場合は,非けいれん性のてんかん重積状態に移行している可能性があり,緊急脳波による診断がかかせない.

学びのポイント

●けいれん発作が5分以上続くと,自然に発作が止まらない,てんかん重積状態と診断する.

●原因として,慢性てんかん患者の退薬や急性の中枢神経障害(脳炎,代謝性脳症など)が挙げられる.

●神経救急症として,抗てんかん薬・麻酔薬の静脈内投与をすみやかに行う.

▼定義

 てんかん発作は,通常1~2分,長くても3分で停止する.てんかん重積状態はてんかん発作が遷延する状態と定義され,けいれん性と非けいれん性(意識障害の遷延)に分けられる.

▼病態

 てんかん重積状態は,発作停止機構の破綻または異常に遷延する発作を引き起こす機構が惹起されることで,てんかん発作が遷延する状態と定義される.けいれん発作が5分以上続けば,けいれん性てんかん重積状態と診断し,神経救急症としてすみやかな治療を開始する.身体の一部(例:右上肢)に限局してけいれんが出現する場合と全身に出現する場合があるが,後者がより重篤な病態である.30分以上けいれん重積状態が遷延化すると,脳に後遺症が残る可能性がある.慢性にてんかんを患う患者の退薬や,代謝性,中毒性,器質性,感染性,炎症性など急性の中枢神経障害に伴い出現しうる.

▼診断

‍ けいれん発作が5分以上続けば,けいれん性てんかん重積状態と臨床診断する.鑑別診断として,心因性のけいれん発作が挙げられ,てんかん発作に非典型な症状(閉眼や首を左右にふるなど)や発作中の緊急脳波で診断する.けいれんが止まっても意識障害が遷延化する場合は,非けいれん性のてんかん重積状態に移行している可能性があり,緊急脳波による診断がか

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