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治療

4 キアリ奇形
Chiari malformation
井原 哲
(東京都立小児総合医療センター・脳神経外科医長)

▼定義

 小脳扁桃や延髄が大後頭孔より脊柱管内に陥入した状態をChiari(キアリ)奇形という.

▼分類

 形態学的に1~4型に分類される.小脳扁桃のみ脊柱管内に下垂する1型と小脳虫部から延髄まで脊柱管内に下垂する2型とに大別される.Arnold-Chiari(アーノルド-キアリ)奇形とはこの2型のことを指す.後頭蓋窩髄膜瘤を伴うものを3型,小脳形成不全を伴うものを4型とよぶが,その頻度はきわめてまれであり割愛する.

▼病態

 Chiari奇形1型は後頭蓋窩形成不全を背景として後頭蓋窩容積と神経組織容積との不均衡をきたして発生する.Chiari奇形2型は,脊髄髄膜瘤に合併して発生する.

▼症状

 Chiari奇形1型の症状は,後頭蓋窩圧迫による症状(頭痛,頸部痛,下位脳神経障害,小脳症状,呼吸障害,嚥下障害)と脊髄機能障害(感覚障害,側弯症,膀胱直腸障害,痙縮)が代表的であり成人発症が多い.頭痛,後頸部痛はcough headacheなどともよばれくしゃみや咳嗽で増悪しやすい.Chiari奇形1型の約50%,脊髄空洞症を伴うもののうち約90%は症候性となる.

 Chiari奇形2型は乳幼児期に発症することが多い.脳幹症状や下位脳神経障害,嚥下・呼吸障害が主だが,Chiari奇形1型に比べ重篤である.致死的経過をとることもあるため,特に乳児では症状が出た場合に準緊急的な対応が必要である.

▼診断

 MRI矢状断像で小脳組織の脊柱管内陥入を認める.Chiari奇形1型,2型とも脊髄空洞症を伴うことが多く,脊髄の評価も同時に行う.

▼治療・予後

 Chiari奇形および合併する脊髄空洞症由来の臨床症状を伴う場合,外科的減圧術が必要になる.Chiari奇形1型に対しては,大後頭孔減圧術および第1頸椎椎弓切除術が標準的術式である.

 Chiari奇形2型に対しては,まず合併する脊髄髄膜瘤に対する修復術と水頭症

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