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治療

5 脊髄空洞症
syringomyelia
村上 龍文
(川崎医科大学准教授・神経内科学)

▼定義

 種々の原因で脊髄内に空洞ができ,髄液が貯留し症状を生じるものを脊髄空洞症(syringomyelia)とよぶ.下部頸髄から上部胸髄に好発する.

▼病態

 空洞の発生機序は脳脊髄液の灌流障害が関与していると考えられている.WilliamsはChiari(キアリ)奇形1型での大孔部で髄液灌流障害が生じ,頭蓋内と脊髄くも膜下腔に圧較差が生じ,咳や力みなどの際に第四脳室の髄液が脊髄中心管開口部から流入し空洞を形成する圧較差説を提唱した.その他圧較差で脊髄実質から髄液が侵入する説や,後根にそって侵入する説,拡張した血管周囲腔から侵入する説など種々の説が提唱されている.

▼疫学

 2009年のわが国の脊髄空洞症の疫学調査では有病率は1.94/10万人である.

▼分類

 基礎疾患の半数はChiari 奇形1型によるもので,その他脊髄外傷,脊髄癒着性くも膜炎などが挙げられる.脊髄内腫瘍による空洞は囊胞形成によるもので脊髄空洞症には狭義には含めない.

▼診断

症状と徴候

 古典的症候として両側性の宙吊り型の解離性感覚障害と上肢の筋力低下,筋萎縮が知られている.初発症状は片側上肢の痛みや温痛覚の低下・消失が多く,その後筋力低下や筋萎縮が出現する.進行するに従い反対側にも症状が認められるようになる.さらに空洞が拡大すると下肢で痙縮,腱反射の亢進,病的反射陽性などの錐体路徴候や,後索が障害され感覚性運動失調などを呈する.またHorner(ホルネル)症候群,発汗異常,手の肥大などの自律神経症状,Charcot(シャルコー)関節,側弯症などを合併することがある.

 Chiari 奇形1型の小児脊髄空洞症例では側弯症が初発症状となることが多い.

 延髄空洞症(syringobulbia)は空洞が延髄に進展したもので,三叉神経領域の感覚障害,舌萎縮,嚥下障害,嗄声,眼振,睡眠時無呼吸などの脳神経症状を呈する.

MRI

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