診療支援
治療

7 コケイン症候群
Cockayne syndrome(CS)
伊藤 康
(東京女子医科大学派遣准教授・小児科)

学びのポイント

●DNAは生体内の活性酸素や紫外線・X線・タバコなどの環境要因により常に損傷を受けている.

●Cockayne症候群,毛細血管拡張性運動失調症,色素性乾皮症,Werner症候群などは,DNA修復機構に関与する遺伝子異常により発症する.

●DNAの修復が追いつかずにDNA損傷が蓄積することで細胞は老化する.したがって,遺伝性のDNA修復障害では,癌化や神経変性とともに早老性変化がみられる.

▼定義

 悪液質様低身長,小頭症および認知障害を含む重度の神経症状,網膜色素変性症,白内障,感音性難聴,歩行および摂食障害,内分泌・外分泌障害,腎障害,心血管障害,骨格系障害,光線過敏症など多彩な臨床症状を呈する疾患で,常染色体劣性遺伝形式で遺伝する.早老症に分類される疾患の1つで,老化が促進したようにみえる諸症状を呈する.

▼病態

 従来,転写および転写共役ヌクレオチド除去修復型のDNA修復機構の欠陥に起因すると考えられてきた.最近の研究では,塩基除去DNA修復機構やミトコンドリア機能の欠陥もさらに重要な役割を果たす可能性が示唆されている.DNA修復機構に関わる因子により2つの相補性群(CSAとCSB)に分類され,それぞれERCC8(5q12.1),ERCC6(10q11.23)が原因遺伝子である.

▼疫学

 100万人に約2.5人の発生というまれな疾患である.

▼分類

 古典型のⅠ型,出生時より症状が出現し重症型のⅡ型〔別名,cerebro-oculo-facial症候群,Pena-Shokeir(ペナ-ショッカー)症候群Ⅱ型〕,より軽症/遅発型のⅢ型,色素性乾皮症-Cockayne症候群(XP/CS)がある.

▼診断

 研究班作成の診断基準がある.本邦における全国調査では,Ⅰ型では成長障害,光線過敏症,難聴,特異な老人様顔貌(目のくぼみ),足関節拘縮,知的障害および大脳基底核石灰化の7つの所見

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