診療支援
治療

1 頭蓋骨縫合早期癒合症
craniosynostosis
下地 一彰
(順天堂大学大学院准教授・脳神経外科学)

疾患を疑うポイント

●頭蓋縫合が早期に癒合し,特異的な頭蓋形態を呈する先天奇形.頭囲は正常であることが多く,乳児健診で見落とさないためには大泉門の狭小化以外に頭蓋形態にも注目する.

学びのポイント

●頭囲測定や大泉門の状態で診断がつくことは困難.どのような特異的頭蓋形態をとるか知っておく必要がある.

●症候群性頭蓋骨縫合早期癒合症は早期より重篤な症状が出ることがあり,長期にわたる治療が必要.脳神経外科,形成外科,小児科など多くの科がサポートできる体制の整った施設で治療をする.

▼定義

 頭蓋縫合が早期に癒合し,化骨縫合線に垂直縫合への成長が阻害される.その代償としてほかの方向に過度に頭蓋拡大が進展,頭蓋顔面変形が進む.程度により頭蓋内圧亢進症状を呈する場合もある.

▼病態

 形態学的には通常の頭蓋形態とは異なる形態をとる.脳神経外科的観点からは,脳の容積が急激に増大する2歳までの時期に脳を受け入れるべき頭蓋が十分に拡大しなければ,頭蓋内腔の狭小化によって頭蓋内圧亢進をきたすといわれているため,早期に頭蓋形成術が必要となる.また症候群性の例では複数縫合早期癒合による頭蓋内容積の狭小化に加え,水頭症や頸静脈孔の狭小化を伴えば,頭蓋内圧亢進を助長する.顔面骨の低形成を伴うことが多く,呼吸障害などの症状も併発する.

▼疫学

 欧米では2,500~3,000出生に1人と報告される.非症候群性早期癒合症が85%を占める.わが国での頻度は明確ではないが,全国調査にてわが国で行われた手術総数が2012年176例であり欧米と比較して頻度は少ないと思われる.

▼分類

 頭蓋骨だけの早期癒合である非症候群性頭蓋骨縫合早期癒合症と顔面骨形態異常,合指症などを伴った症候群性頭蓋骨縫合早期癒合症に分類される.非症候群性頭蓋骨縫合早期癒合症は単一の早期癒合が多くそれぞれ特徴的な頭蓋顔面の形態をとる(図10-113)

▼診断

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