診療支援
治療

神経心理検査
佐藤 正之
(三重大学大学院准教授・認知症医療学)

◆神経心理検査の位置づけ

●認知症の診断の第一歩は,認知症の有無・重症度を明らかにすることである.そのための評価法として質問法と観察法がある(図10-52).質問法とは,いわゆる神経心理検査である.観察法は,家族や介護者からの聞き取りのことである.

●認知症の有無・重症度の判定においては観察法がより重要である.特に,認知症の行動・心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia:BPSD)や実行機能障害については,観察法なくして把握は困難である.質問法すなわち神経心理検査は,低下あるいは残存する認知機能を明らかにし,訓練やリハビリなどの介入のターゲットを明確化するために用いられる.

◆主な神経心理検査(表10-19)

◎知能

●認知症の臨床場面ではMini-Mental State Examination(MMSE)や改訂長谷川式簡易知能評価スケール(Hasegawa Dementia Scale-Revised:HDS-R)が頻用される.認知症の初期にはHDS-Rの得点低下が目立ち,MMSEの得点は遅れて低下する.これにはHDS-Rでの語想起の得点変化が関与している.

●近年,軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI)や軽度認知症のスクリーニング検査として開発されたのがMontreal Cognitive Assessment(MoCA)である.MMSEやHDS-Rでは天井効果のため異常を検出できないような患者に対して有用である.

●認知症が重度になるとMMSE,HDS-R,MoCAともに得点が下げ止まりとなる.そのような患者を対象とするのがSevere Impairment Battery(SIB)である.Wechsler(ウェクスラー)成人知能検査第3版(Wechsler Adult I

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