▼定義
2016年に欧米の集中治療学会により改定された新しい敗血症の定義では,敗血症とは感染症があり,それに対する生体反応が制御できず,生命にかかわる臓器障害が起こっている状態である.これは以前の定義の重症敗血症に相当し,成人に適用される.
▼病態
敗血症は感染による炎症性メディエーターが血流に入って全身に広がり,全身的な過大反応が起こった状態である.敗血症の病態は,侵襲性の細菌感染,トキシン,大量の炎症性メディエーター,補体活性化,遺伝的素因などが関与して起こる.
➊病態機序
1)細菌の要因
細菌の細胞壁構成物〔エンドトキシン(内毒素),ペプチドグリカン〕などと細菌が産生する外毒素(staphylococcal enterotoxin B,toxic shock syndrome toxin-1,streptococcal pyrogenic exotoxin AおよびBなど)が局所感染から敗血症に進展する要因となる.
エンドトキシンは,補体の活性化,血液凝固,線溶系の亢進をもたらし,微小血管の血栓症やブラジキニンなど血管作動性物質の産生をもたらす.
2)過剰な炎症性メディエーター
敗血症では大量の炎症性サイトカイン,特にTNF-αとIL-1が血流に放出され,そのために発熱,血圧低下,白血球増多,凝固系と線溶系の亢進とほかの炎症性サイトカインの誘導が起こる.
3)補体の活性化
補体系の非常な活性化が敗血症の病態に関与している.
4)遺伝的抵抗力減弱
➋臓器細胞障害の機序
敗血症では免疫反応が全身に作用して広範な細胞障害が起こり,臓器機能障害が起こる.細胞障害の要因としては,組織の虚血,炎症性メディエーターによる直接的細胞障害,変化したアポトーシス(細胞死)などがある.
1)組織の虚血
敗血症では凝固系,線溶系の不規則な亢進が起こり,微小循環の障害が起こる.また血管内皮細胞と活性化した多核