▼定義
インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)は,ヘモフィルス属のグラム陰性の小桿菌である.Haemophilusという属名は血液を好むという意味が含まれており,インフルエンザ菌は発育に血球成分中のⅩ因子(ヘミン)とⅤ因子(NAD)の両方が必要であり,チョコレート寒天培地に発育を認める.なお,この名前はインフルエンザ流行時に患者から本菌が分離されたために誤ってインフルエンザの原因と当初考えられたことに由来している.
本菌は感染症は肺炎,気管支炎などの呼吸器感染症,中耳炎,副鼻腔炎などの耳鼻科領域感染症,および髄膜炎などの中枢神経系感染症において重要である.
▼病態
インフルエンザ菌は健康な人も上気道(咽頭,鼻腔)に保菌しており,特に小児では50~80%の高い割合で保菌がみられる.
本菌は血清型により6種類の莢膜型(a~f型)と莢膜をもたないnontypableに分類され,一般的に莢膜を有する株が病原性が強い.特にインフルエンザ菌b型株(Hib)は通称ヒブともよばれ,最も強い病原性を有しており,髄膜炎や菌血症症例の大半はb型株によって起こる.一方,莢膜をもたないnontypableの株(無莢膜株)は組織との親和性に優れており,主に肺炎など呼吸器感染を起こす.
➊呼吸器感染症
本菌は肺炎の主要な原因菌であり,市中肺炎のなかでは肺炎球菌に次いで多い.症状としては,咳,喀痰,発熱など細菌性肺炎の典型的な症状を伴いやすい.本菌は肺炎球菌と同様に急性気管支炎の原因菌にもなりうる.慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)患者などにおける慢性気道感染症においては,本菌による慢性感染を引き起こし,持続性の咳や痰が認められるが,急性増悪を起こすと咳や痰の程度が増え,発熱や呼吸困難などを伴うことがある.
➋耳鼻
関連リンク
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