▼定義
クレブシエラ属の菌はグラム陰性桿菌で腸内細菌科に属しており,ヒトの腸管内の常在菌である.肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)が臨床的に最も重要な菌種であり,腸内細菌科のなかでは大腸菌に次いで多く分離されている.また,クレブシエラ属のなかではK. oxytocaも感染症の原因菌として分離されることがある.
肺炎桿菌は呼吸器感染症や尿路感染症,および肝・胆道感染症の主要な起炎菌であり,菌血症や敗血症も起こしうる.
▼病態
肺炎桿菌が有する莢膜は本菌の重要な病原因子であり,好中球やマクロファージによる貪食に抵抗性を示す.本菌は腸内細菌科細菌として,誰もが腸管内に保有している細菌であるが,腸管内に存在する状況では病原性を示すことはなく,なんらかのきっかけでほかの部位に侵入した際に感染症の原因となりうる.
➊肺炎,肺化膿症
本菌による肺炎は,アルコール多飲,糖尿病,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)を有する中高年~高齢の男性に起こりやすい.悪寒,高熱,咳を認め,痰は粘稠で時に血液が混ざったゼリー状の痰が認められる.典型例では広範囲の肺炎(大葉性肺炎)を起こし,胸部X線で膨張性の肺病変(bulging fissure sign)を示す.肺組織の破壊により壊死や出血を起こしやすく,化膿性変化によって胸部X線やCTでは空洞を認めることも多い.
➋尿路感染症
肺炎桿菌は尿路感染症の原因菌として比較的多く分離され,特に尿道カテーテルが留置された症例などでは複雑性尿路感染の重要な菌となっている.腎盂腎炎の場合は悪寒,高熱を認め,さらに菌血症や敗血症に至る例がある.肺炎桿菌以外に,K. oxytocaも尿路感染の原因菌として分離されることがある.
➌肝・胆道系感染症
本菌は胆囊炎や胆管炎などを起こしやすく,特に
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