▼定義
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は,好気性のグラム陰性桿菌であり,ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌(glucose non-fermenting gram-negative rod:NFGNR)に属する.自然環境中に広く存在し,院内では流し台やトイレなどの湿潤環境で生息しやすい.ピオシアニンなどの色素を産生し,培地上では緑色のコロニーを形成する.
カルバペネム系,フルオロキノロン系,およびアミノグリコシド系の3系統の抗菌薬は緑膿菌感染症の治療に用いられる主要な抗菌薬であるが,これらの3系統の抗菌薬すべてに耐性を示す緑膿菌が多剤耐性緑膿菌(multidrug-resistant P. aeruginosa:MDRP)とよばれている.
▼病態
緑膿菌による感染症は,基本的には日和見感染症として発症する場合が多く,生体側の防御機構に障害がある患者で起こりやすい.特に好中球は緑膿菌に対する防御機構として非常に重要であり,好中球減少状態によって緑膿菌による菌血症や敗血症など重症感染のリスクが高くなる.
本菌はさまざまな病原因子を有し,エラスターゼ,プロテアーゼ,ホスホリパーゼなどの酵素は生体の細胞を傷害し菌の排除を妨げる.Ⅲ型分泌装置(type Ⅲ secretion system)は外毒素(exotoxins)などの毒素や酵素を宿主の細胞内に効率的に送り込み障害を与える.リポ多糖体(lipopolysaccharide:LPS)は炎症性サイトカインの産生を誘導し,エンドトキシンショックを引き起こす.また,本菌はバイオフィルムを形成し,好中球などによる貪食に抵抗性を示し,抗菌薬の浸透性を低下させる.
明らかな免疫不全ではないが,緑膿菌による感染症を発症しやすい例として,器質的な障害を有する例が挙げられる.例えば慢性閉塞性肺疾患(chronic obstruc
関連リンク
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