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治療

11 腸チフス,パラチフスA
typhoid fever,paratyphoid fever
角田 隆文
(菊名記念病院・総合診療科)

疾患を疑うポイント

●世界中に蔓延する不明熱の代表.

●熱帯地方の発展途上国においてはcommon diseases.

学びのポイント

●わが国ではインドなど南アジアからの輸入例が多い.

●薬剤耐性株が多く,感受性試験を怠らない.

▼疫学

 腸チフス,パラチフスAはそれぞれチフス菌(Salmonella enterica subsp. enterica serovar Typhi),パラチフスA菌(S. Paratyphi A)による全身性感染症であり,一般のサルモネラ感染症とは区別され,三類感染症に指定されている.

 南アジア,東南アジアに多く,発展途上国で蔓延している.先進国では散発的発生であり,ほぼ輸入事例である.わが国では年間20~30例である.

‍ S. TyphiやS. Paratyphi Aは宿主特異性があり,ヒトのみに感染する.マクロファージに貪食されて細胞内で増殖し,菌血症を生じる.

▼症状

 通常,潜伏期間は7~14日.発熱,頭痛,食欲不振,全身倦怠感などの症状を発症する.4病期に分けられ,第1病期には,体温が段階的に上昇し39~40℃に達し,腸チフスの三徴とされる比較的徐脈,バラ疹,脾腫が出現する.三徴すべてが出現する率は低い.第2病期は40℃台の稽留熱となり,チフス性顔貌とよばれる無欲状顔貌がみられ,下痢または便秘を呈する.重症時には意識障害,難聴などがみられる.第3病期では弛張熱を経て,徐々に解熱する.この時期に腸出血や腸穿孔を起こすこともある.第4病期には解熱し回復に向かう.

 比較的徐脈はもともと黄熱病の症状として記載されたが,それは高熱時に心拍数が60/分に届かないことをさす.定義はないが,腸チフスでは39℃以上の発熱時に心拍数が100/分以下のものが6割以上を占める.

▼診断

 血液,尿,便,胆汁の培養から検出される.最も検出感度がよいのは骨髄培養とされる.

 発展途上

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