疾患を疑うポイント
●血便による下痢から赤痢と称する.
●ヒト-ヒト感染し,集団赤痢となる.
学びのポイント
●三類感染症.
●ヒト-ヒト感染しやすい.
●初発症状は発熱が主体で,水様下痢が多く,散発例の多くが東南アジアからの輸入例.
▼分類
原因菌はシゲラ属の4菌種(Shigella dysenteriae,S. flexneri,S. boydii,S. sonnei)である.菌種は亜群ともよばれ,それぞれA群,B群,C群,D群に該当する.
▼疫学
衛生状態の改善とともに,その国における発生は減少し,輸入感染症となっていく.赤痢の特徴は少量の菌で感染し,ヒトからヒトへ感染拡大していくことである.食中毒型の単一曝露でなく,保育園・幼稚園・学校という単位で集団発生する.
コレラと異なり,国際的なサーベイランスがないため,Rプラスミドなど耐性菌情報が少ない.
▼症状
細菌性赤痢は通常1~3日の潜伏期の後に,全身倦怠感,悪寒を伴う急激な発熱で発症し,発熱が1~2日続いた後,水様下痢,腹痛,しぶり腹,膿粘血便などのいわゆる赤痢症状が出現する.
S. dysenteriae,S. flexneriは典型的な赤痢症状を起こすことが多いが,S. sonneiでは軽度の下痢,あるいは無症状で経過することが多い.
Shigella dysenteriae type1は特殊な細胞毒,すなわち志賀毒素を産生し,溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome:HUS)を続発することがある.HUSの発症機序は完全には解明されていないが,特に小児では予後不良である.
S. flexneri感染の合併症として,主にHLA-B27を有する白人にReiter(ライター)症候群とよばれる関節炎をきたすことがある〔第13章「反応性関節炎(ライター症候群)」の項(→)も参照〕.関節炎,結膜炎,尿道炎