疾患を疑うポイント
●浸淫地への渡航.
●発熱のない水様下痢.
●急激な脱水状態.
学びのポイント
●三類感染症である.
●病原体に汚染された水,または食品を介して感染する.海外,特に流行地域へ渡航する際には,生水を飲まない,生または十分に加熱していない魚介類の喫食を避けるなどの注意が必要である.
▼病原体
コレラ菌Vibrio cholerae O1およびO139のうちコレラ毒素産生性菌.
世界的流行を繰り返してきた古典型あるいはアジア型コレラ菌は高い死亡率を示していたが,第7次パンデミックとされる現在の流行は,1961年にインドネシアのスラウェシ島に端を発したO1血清型のEl Tor(エルトール)コレラ菌である.さらに1995年以降分離されるのはEl Tor変異型であり,古典型毒素を産生する.
WHOに報告されている世界の患者総数は,ここ数年20万~30万人だが,推計では100万人を超えるとされる.特定の地域では一般的な疾病である.
O139コレラ菌によるコレラは,新興感染症の1つで,1992年インド南部のマドラス(現チェンナイ)で発生し,またたく間にインド亜大陸に広がった.現在もインドやバングラデシュにおいてO1El Torコレラ菌と交互に,あるいは同時に流行を繰り返している.インド亜大陸の近隣諸国においてもO139コレラの散発発生報告はある.
血清型O1はO抗原の部分抗原から小川型,稲葉型,彦島型に分類される.
▼症状
潜伏期間1~5日.激しい水様下痢と嘔吐がみられ,急速に脱水状態に陥る.便は米のとぎ汁様.
治療の基本は輸液で抗菌薬は下痢期間短縮の効果がある.東南アジアでの感染例が多い.
▼治療と予防
治療は大量に喪失した水分と電解質の補給が中心であり,糖電解質補水液(glucose-electrolyte-solution:GES)の経口投与や静脈内点滴注入を行う.WHO/UNIC