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治療

4 日本紅斑熱
Japanese spotted fever
小山 信吾
(山形大学講師・第三内科)

▼定義

 本疾患はリケッチアの一種Rickettsia japonicaを病原体とするダニ媒介性疾患である.

▼病態

‍ R. japonicaは継卵感染によってマダニ類の体内で受け継がれる.ヒトへの感染は病原リケッチアを保有したマダニ類(キチマダニ,フタトゲチマダニ,ヤマトマダニなど)が皮膚を刺咬することによって生じる.

▼疫学

 本疾患は世界で初めて徳島県から報告された.西日本での発生例が多いが,近年は関東圏からの報告もみられている.冬を除いてほぼ一年中発生し,マダニの活動時期と一致する.

▼診断

 潜伏期は2~8日とつつが虫病に比べ比較的短い.発熱,頭痛,倦怠感を伴い急激に発症する.高熱,発疹,刺し口が三徴であるが,つつが虫病に類似する.紅斑は体感部より四肢に多い傾向があり手掌部と足底部の紅斑はつつが虫病でみられない,本症において特徴的な所見とされるが,数日で消失するため注意を要する.刺し口は5~10mmの赤く丸い硬結で中心部に黒い痂皮を有する.診断に重要な手がかりとなるため毛髪部位も含め十分観察する.感染機会となる野山や田畑への立ち入りなどの生活歴の聴取が重要である.

 白血球減少,異型リンパ球の出現,血小板減少,CRP上昇,トランスアミナーゼの上昇などがみられ,重症例では播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)を呈する.ペア血清で抗体価の上昇またはIgM抗体の上昇を証明する.PCRによるDNA診断も有用だが,これらの検査は専門機関に限られている.

▼治療

‍ テトラサイクリン系抗菌薬が著効を示す.高熱をきたした例では,早期からニューキノロン系との併用が推奨されている.β-ラクタム系やアミノグリコシド系の抗菌薬は無効である.

▼予後

 つつが虫病よりも重症化しやすいとされ,死亡例も報告されている.

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