▼定義
本疾患はマダニが媒介する感染症であり,アナプラズマ科に属するEhrlichia chaffeensis,Anaplasma phagocytophilum,E. ewingii,Neorickettsia sennetsuがヒトへの感染症をきたす病原菌として知られている.かつてリケッチア科エーリキア属に分類されていたため,これらの菌による感染症は慣例的にエーリキア症とよばれることもある.
▼病態
シロアシネズミ,オジロジカ,イヌ,コヨーテなどをリザーバーとし,マダニ類をベクターとしてヒトへ感染する.E. chaffeensisによるヒト単球性エーリキア症(human monocytic ehrlichiosis:HME),A. phagocytophilumによるヒト顆粒球アナプラズマ症(human granulocytic anaplasmosis:HGA),E. ewingiiによるhuman ehrlichiosis ewingii(HEE),N. sennetsuによるネオリケッチア症に分類される.
▼疫学
HMEは北米での報告が中心でほかのリケッチア感染症との混合感染に注意が必要である.HGAは北米,ヨーロッパでの報告が多いが,シベリア,中国,韓国での報告もある.HEEはHME同様,北米での報告が中心である.ネオリケッチア症はかつて西日本で発生し,特に九州の風土病とされていたが,近年は報告がない.
▼診断
エーリキアおよび関連菌の感染症は発熱,頭痛,関節痛,筋痛といった非特異的な症状で発症する.HMEではトランスアミナーゼ上昇,白血球減少,血小板減少をきたし,正常免疫者でも急性呼吸不全,消化管出血,腎不全,髄膜炎などで致命的な経過となることもある.HGA,HEEもHMEと同様の症状を呈することがあるが,重症化することは比較的少ない.HME,HGA,HEEとも血液