診療支援
治療

1 クラミジア肺炎,オウム病
Chlamydia pneumonia,psittacosis
石田 直
(倉敷中央病院・呼吸器内科主任部長)

疾患を疑うポイント

●肺炎クラミジア肺炎は,自然寛解傾向もある軽症の非定型肺炎である.

●オウム病は,トリとの接触,飼育歴がある.

学びのポイント

●肺炎クラミジア感染症は細菌性肺炎との合併が多い.

●しばしば,集団内流行を起こす肺炎である.

●オウム病は重症化しやすく,肺外症状を合併することがある.

▼定義

 肺炎クラミジア(Chlamydophila pneumoniae)およびChlamydia trachomatisによる肺実質の炎症である.

 オウム病は,Chlamydophila psittaciによる人畜共通感染症である.

▼病態

 クラミジアは,生きた動物細胞内でのみ増殖可能な偏性寄生性菌である.宿主細胞の封入体内で基本小体(elementary body:EB)から網様体(reticular body:RB)への変換,分裂のサイクルを繰り返して増殖する.

 肺炎クラミジアは,飛沫感染によりヒト-ヒトへ伝播し,気道粘膜に接着して宿主細胞に貪食されたのちに増殖する.気道での炎症性細胞の活性化,炎症性サイトカインやケモカインを放出して炎症を惹起するとともに,粘液過分泌や気道過敏性亢進にも関与していると考えられている.

‍ Chlamydophila psittaciは,罹患した鳥類の分泌物,排泄物を経気道的に吸入することや,口移しで給餌することによる経口感染によってヒトへの感染が起こる.

‍ Chlamydia trachomatisは,尿路生殖器系感染症の原因菌であり,分娩時の産道感染により新生児肺炎を発症するが,成人では性行為感染症(STD)としてまれに肺炎が認められる.

▼疫学

 成人市中肺炎における肺炎クラミジア肺炎の頻度は,報告により1~20%と幅がみられるが,これは診断方法の相違や集団発生の有無によるものと考えられる.肺炎クラミジア感染症は不顕性感染も多く,中年以降の成人では過半数

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