▼定義
Chlamydia trachomatisによる感染症である.本菌の大きさは直径0.3μmで一般細菌とウイルスの中間に位置する.細菌と同様にDNAとRNAを有し,グラム染色では陰性桿菌に分類されるが,自らATPを産生・増殖できないため偏性細胞内寄生性がある.生活環は2形態をとり,感染型である基本小体と増殖型である網様体の2つの細胞サイクルがある.基本小体は生体内の細胞に感染し取り込まれ,宿主からエネルギーや栄養を取得し,宿主細胞内で網様体に形を変えて増殖する.その後中間体を経て再び基本小体となりほかの細胞に感染する.血清学的に18種類の血清型(A~K,L1~3,Ba,D',I',L2')に分類され,A~Cが眼感染症,D~Kが性感染症,L1~3が性病性鼠径リンパ肉芽腫の原因となる.日本で分離される血清型は約70%がD,E,F,Gである.C. trachomatis感染ではHsp60が炎症反応の強さや組織傷害性との関連が示されている.また近年typeⅢ secretion systemが宿主細胞への侵入制御や,生体の免疫システムからの回避に作用していることが明らかとなってきている.
▼病態
1)性器クラミジア感染症
性感染症のなかで最も罹患者数が多い感染症の1つである.
男性の場合,感染後1~2週間の潜伏期を経て,尿道から漿液性分泌物と排尿痛が出現する.尿道の瘙痒感や違和感が認められる場合もある.尿道炎から精巣上体炎,前立腺炎を引き起こすこともある.精巣上体炎はクラミジア尿道炎の約5%に起こる.男性のC. trachomatis感染者の約50%は無症状である.
女性は罹患しても50%は自然治癒する.初期症状は帯下が主な主訴であるが,無症状であることが多い.無治療例では持続感染し,そのうち10%は子宮頸管から上行性に子宮・卵管,腹腔内に達し,子宮頸管炎,子宮内膜炎,卵管炎,
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