診療支援
治療

5 ニューモシスチス症
pneumocystosis
泉川 公一
(長崎大学大学院教授・臨床感染症学)

疾患を疑うポイント

●HIV感染,ステロイド薬使用など細胞性免疫障害を有し,呼吸不全を呈する肺炎をみたら,本症を疑う.

●HIV感染患者の日和見呼吸器感染症としても頻度は高い.

学びのポイント

●本菌は人工的に分離,培養ができないために,呼吸器検体の鏡検や,遺伝子診断法で診断する.

●呼吸不全を呈する場合は,ST合剤に加えて,ステロイド薬を使用する.

▼定義・概念

‍ Pneumocystis jiroveciiによる感染症であり肺炎を呈する.シストと栄養体の2つの形態で生活環を形成しており,肺の病変部では両者の形態をとる.本菌は人工的に分離,培養できない〔第2章「ニューモシスチス肺炎」の項()も参照〕.

▼病態・分類・疫学

 肺炎を呈するが,正確な感染経路は不明で,幼少期に不顕性感染し,免疫低下時に,再活性化して発症すると考えられている.病態は,P. jiroveciiに対する宿主の過剰な免疫応答によるものと考えられ,細胞性免疫の低下した宿主に感染,発症し,特にHIV感染患者に高頻度に合併する.HIV感染以外にもステロイド薬,免疫抑制薬,生物学的製剤なども感染危険因子となる.わが国における正確な罹患率は不明である.

▼臨床症状・診断

 発熱,乾性咳嗽,呼吸困難が三徴であるが非特異的である.本症に特異的な血清診断法はなく,血清(1→3)-β-D-グルカン,LDH値が上昇する.胸部X線やCT検査では,典型例では肺門部から両側にびまん性に拡がるすりガラス影を認めることが多い.それ以外にも浸潤影,結節陰影,囊胞や空洞など多彩な陰影を呈する.P. jiroveciiはいまだに培養方法が確立していないため,原則としては,喀痰や気管支肺胞洗浄液でP. jiroveciiの菌体を証明する.Giemsa(ギムザ)染色では栄養体を,Grocott(グロコット)染色ではシストを検鏡により検出する(図11-28

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