疾患を疑うポイント
●HIV感染,ステロイド薬使用など細胞性免疫障害を有し,呼吸不全を呈する肺炎をみたら,本症を疑う.
●HIV感染患者の日和見呼吸器感染症としても頻度は高い.
▼定義・概念
Pneumocystis jiroveciiによる感染症であり肺炎を呈する.シストと栄養体の2つの形態で生活環を形成しており,肺の病変部では両者の形態をとる.本菌は人工的に分離,培養できない〔第2章「ニューモシスチス肺炎」の項(→)も参照〕.
▼病態・分類・疫学
肺炎を呈するが,正確な感染経路は不明で,幼少期に不顕性感染し,免疫低下時に,再活性化して発症すると考えられている.病態は,P. jiroveciiに対する宿主の過剰な免疫応答によるものと考えられ,細胞性免疫の低下した宿主に感染,発症し,特にHIV感染患者に高頻度に合併する.HIV感染以外にもステロイド薬,免疫抑制薬,生物学的製剤なども感染危険因子となる.わが国における正確な罹患率は不明である.
▼臨床症状・診断
発熱,乾性咳嗽,呼吸困難が三徴であるが非特異的である.本症に特異的な血清診断法はなく,血清(1→3)-β-D-グルカン,LDH値が上昇する.胸部X線やCT検査では,典型例では肺門部から両側にびまん性に拡がるすりガラス影を認めることが多い.それ以外にも浸潤影,結節陰影,囊胞や空洞など多彩な陰影を呈する.P. jiroveciiはいまだに培養方法が確立していないため,原則としては,喀痰や気管支肺胞洗浄液でP. jiroveciiの菌体を証明する.Giemsa(ギムザ)染色では栄養体を,Grocott(グロコット)染色ではシストを検鏡により検出する(図11-28
関連リンク
- 新臨床内科学 第10版/1 ニューモシスチス肺炎
- 治療薬マニュアル2024/(合剤)スルファメトキサゾール・トリメトプリム(ST合剤)《バクタ バクトラミン》
- 治療薬マニュアル2024/(合剤)スルファメトキサゾール・トリメトプリム(ST合剤)《バクトラミン》
- 治療薬マニュアル2024/アトバコン《サムチレール》
- ジェネラリストのための内科診断リファレンス/8 レジオネラ肺炎
- 臨床検査データブック 2023-2024/アスペルギルス抗体
- 臨床検査データブック 2023-2024/サーファクタントプロテインA〔SP-A〕 [保] 130点
- 新臨床内科学 第10版/2 アスペルギルス症
- 新臨床内科学 第10版/6 トリコスポロン症
- 今日の診断指針 第8版/ニューモシスチス肺炎
- 今日の診断指針 第8版/マイコプラズマ肺炎
- 今日の診断指針 第8版/アレルギー性気管支肺アスペルギルス症
- 今日の診断指針 第8版/薬剤性肺障害
- 今日の診断指針 第8版/オウム病