診療支援
治療

(3)リーシュマニア症
leishmaniasis
所 正治
(金沢大学先進予防医学研究センター・准教授)

▼定義

 トリパノソーマ科リーシュマニア属原虫(Leishmania spp.)の感染による人獣共通感染症であり,少なくとも20種の本原虫がヒトへの病原性を示す.

▼病態

 感染は吸血性のサシチョウバエを介して起こり,刺入部位よりヒトへ侵入した原虫は血中・組織中のマクロファージ,肝・脾臓,骨髄,リンパ節などの細網内皮系細胞内に寄生する.母子感染,輸血を含む移植による感染や薬物乱用者の注射針の共有によるHIVとの共感染なども報告されている.

 本症の病型は皮膚型,粘膜皮膚型,内臓型の3つに大別されている.

皮膚リーシュマニア症(cutaneous leishmaniasis)

‍ サシチョウバエの刺咬部位の無痛性の発赤・硬結・丘疹,潰瘍を形成.通常は未治療でも数年以内に自然治癒をみる.

粘膜皮膚リーシュマニア症(mucocutaneous leishmaniasis)

 原虫の局所粘膜への感染を特徴とし,鼻中隔・口唇部欠損,咽頭・喉頭軟部組織の破壊を起こす.粘膜皮膚型には皮膚型から進行したと考えられる症例も含まれる.

内臓リーシュマニア症(visceral leishmaniasis)

 別名カラアザール(kala-azar).発熱,悪寒,全身倦怠,貧血などで発症し,リンパ節腫大,肝脾腫をみる全身性の病型であり,末期には浮腫,下痢,黄疸,汎血球減少をみる.無症候性感染が多いが,いったん発症した場合,未治療では死の転帰をとりうる.また不完全治療では,全身に結節性皮疹を多発するカラアザール性皮膚リーシュマニア症(post-kala-azar dermal leishmaniasis)が起こりうる.

▼疫学

 リーシュマニア症は世界中の熱帯,亜熱帯地域にみられ年間70万~100万件の新規感染と2万~3万人の死亡が推計されている.粘膜皮膚リーシュマニア症は主に中南米に蔓延し,死亡原因となりうる内臓リー

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