診療支援
治療

1 赤痢アメーバ症
amebiasis
所 正治
(金沢大学先進予防医学研究センター・准教授)

疾患を疑うポイント

●男性同性愛者,コマーシャルセックスワーカーの赤痢症状や膿瘍疾患.

学びのポイント

●細菌性赤痢,潰瘍性大腸炎,大腸癌,腸結核,痔瘻などの粘血便を伴う下痢症と鑑別し,腸管アメーバ症を診断する.

●肝臓,肺,脳膿瘍では,細菌性膿瘍と鑑別しアメーバ性膿瘍を診断する.

●赤痢アメーバ症は抗菌薬不応性の下痢症や膿瘍として問題となるが,メトロニダゾールが著効.

▼定義

 赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)の感染では無症候性の経過が少なくない.このため,赤痢アメーバ症(amebiasis)は「症状の有無にかかわらず赤痢アメーバが感染した状態」と定義される〔第4章のも参照〕.

 アメーバ赤痢は,本来,「腸管赤痢アメーバ症の赤痢症状を示す一病型」を意味するが,感染症法における五類届出疾患の「アメーバ赤痢」は「腸管内外の赤痢アメーバ症全般」を指し,実際,アメーバ性肝膿瘍なども届出対象となるため要注意.

▼病態

 赤痢アメーバはその生活環において二分裂により増殖する栄養型(trophozoite)と環境耐性の感染型である囊子(cyst)の形態をとる.感染は囊子の経口摂取によって起こり,腸管で脱囊した栄養型が回盲部で増殖,直腸までの腸管上皮細胞下に浸潤することで発症する.無症候性感染が多いが,1年に約10%が発症するとされ,検出された場合は要治療である.病型としては腸管アメーバ症と腸管外アメーバ症に分けられる.

腸管アメーバ症

 囊子摂取後約2週間から赤痢様下痢症(しぶり腹を伴うイチゴゼリー状の粘血便)として緩徐に発症.腹痛,発熱,体重減少をみる.まれに慢性腸炎を経てアメーバ腫(ameboma)とよばれる腫瘤性病変が形成される.

腸管外アメーバ症

 栄養型が浸潤によって隣接臓器へ直達するか血行性に播種する.肺・脳膿瘍も起こりうるがアメーバ性肝膿瘍が最多.典型的には,38

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