診療支援
治療

2 マラリア
malaria
所 正治
(金沢大学先進予防医学研究センター・准教授)

疾患を疑うポイント

●熱帯,亜熱帯地域からの帰国者にみられる発熱発作.

学びのポイント

●死の転帰をとりうる危険な感染症だが,診断は比較的容易で,治療もきわめて効果的であることから,確実に診断し治療を提供する必要がある.

●地域によって蔓延するマラリア原虫の種は異なり,また高度薬剤耐性の分布が知られる地域もあるため感染地域の確定が重要となる.

▼定義

‍ Anopheles属のハマダラカの刺咬によって媒介されるヒト感染性の4種のマラリア原虫の肝細胞と赤血球への感染によって引き起こされる熱性疾患.

 熱帯熱マラリアでは感染赤血球による微小血管閉塞(sequestration)を機序とする重症化があり,重症マラリアの症例定義は,表11-11の臨床所見または検査所見のうち1つ以上に合致するマラリアとされる.

▼病態

 蚊の唾液腺からヒト体内に侵入したマラリア原虫のスポロゾイト(sporozoite)は,まず肝細胞に感染(赤外型ステージ).その後1~4週間をかけて多数分裂によってメロゾイト(merozoite)を形成し続いて血流中に放出する.潜伏期間は,熱帯熱マラリアで1~3週間.ほかのマラリアでは10日~4週間.

 血流中に放出されたメロゾイトは赤血球内に侵入し多数分裂によって新たなメロゾイトを形成,放出する(赤内型サイクル).メロゾイトの赤血球からの放出時には発熱発作がみられる.成熟周期は種によって異なり,三日熱マラリアと卵形マラリアでは48時間,四日熱マラリアでは72時間であり,熱帯熱マラリアでは一定しない.

 発熱発作では,体温の上昇(39~41℃)に伴う悪寒期,次第に熱感を覚える灼熱期をみるが,三日熱および四日熱マラリアでは悪寒期に戦慄を伴うことが多い.また,発熱には倦怠感,頭痛,筋肉痛,関節痛,発汗などがみられ,さらに腹部症状(悪心・嘔吐,下痢,腹痛)や呼吸器症状(咳,呼吸困難)も出現しう

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