疾患を疑うポイント
●妊娠中の抗トキソプラズマIgM抗体価の上昇.
●抗菌薬不応性の脳炎,網脈絡膜炎.
学びのポイント
●虫体を直接検出することがきわめて困難な原虫症であり,画像所見,抗体検査,症状を総合的に勘案して診断.診断的治療がしばしば用いられる.
●トキソプラズマ脳炎はAIDS診断の指標疾患.
●免疫不全における日和見原虫症として問題となるため,抗がん剤治療,移植などでは既往感染の有無の事前確認と日和見発症の予防が重要.
●先天性トキソプラズマ症は,妊娠期間中に母体が初感染となる場合に問題となるが,既往感染では問題とならない.
▼定義
アピコンプレックス門の細胞内寄生原虫Toxoplasma gondiiの組織内寄生による原虫症.感染経路によって妊娠時の経胎盤感染による先天性トキソプラズマ症と囊子やオーシストの経口摂取による後天性トキソプラズマ症に分けられる.後天性トキソプラズマ症では,日和見原虫症としてのトキソプラズマ脳炎と眼トキソプラズマ症が臨床的に重要.
▼病態
トキソプラズマはネコ科の肉食動物を固有宿主とし,腸管上皮細胞内に寄生し有性生殖で形成されたオーシスト(oocyst)が糞便内に排出される.
中間宿主であるネズミなどのげっ歯類やヒトを含む幅広い哺乳類では,無性的な二分裂により増殖し組織内囊子を形成する.
ヒトへの感染経路はオーシストの糞口感染,中間宿主の組織内囊子の経口摂取(豚肉の不適切処理など),胎児への経胎盤感染などである.
初感染ではトキソプラズマは活発に分裂して一時的に急増虫体(tachyzoite)による寄生虫血症を引き起こすが,宿主免疫の応答に伴い組織内囊子に潜伏し,ゆっくりと分裂する緩増虫体(bradyzoite)として生涯にわたり感染を維持する.このため既往感染者では抗体が持続的に陽性となり,再感染でも寄生虫血症は起こらない.
初感染では,発熱,倦怠感,
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