診療支援
治療

1 インフルエンザ
influenza
池松 秀之
(リチェルカクリニカ・代表取締役)

学びのポイント

●毎年冬季に流行し,1,000万人以上が罹患.

●抗インフルエンザ薬による治療が有効.

●高齢者では肺炎の合併率が高く入院や死亡の原因となっている.

●予防の基本はワクチン.ノイラミニダーゼ阻害薬による予防も可能.

▼定義

 インフルエンザウイルスの感染により発症する.インフルエンザウイルスはオルソミクソウイルス科に分類されるRNAウイルスである.ヒトではA型,B型,C型の感染がみられる.C型は軽症で臨床的にはあまり注目されていない.A型はウイルス表面の2つの主要な蛋白である赤血球凝集素(hemagglutinin:HA)とノイラミニダーゼ(neuraminidase:NA)の血清型が,HAは少なくとも16種類,NAは9種類あり,その組み合わせから理論的に少なくとも144種類の亜型が存在する.B型に亜型はなく,ビクトリア系と山形系の2系統に分類されている.

▼疫学

 毎年冬季に流行を繰り返し,1,000万人以上が治療を受けている.2008年から2009年にかけての冬季までは,A(H1N1)(ソ連)型,A(H3N2)(香港)型,B型が流行していたが,2009年A(H1N1)pdm09が出現し,それ以降は,季節性のインフルエンザとしてA(H1N1)pdm09A(H3N2)(香港)型B型が流行を繰り返している.

▼病態

 潜伏期は一般に1~3日で,その後1~2日の短い期間にさまざまな症状が出現する.高熱,咳や鼻汁などの上気道症状,頭痛,筋肉痛,関節痛,全身倦怠感などの全身症状などがみられ,重症感があることが特徴である.消化器症状を伴うこともある.インフルエンザは症状の強さから,英語では“flu”とされ,いわゆる普通感冒を表す“common cold”と別の表現が使われる.

 小児では合併症として中耳炎や副鼻腔炎がみられることがあり,重篤な合併症として脳症がみられる.慢性呼吸器疾患の

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