疾患を疑うポイント
●秋から冬にかけ,嘔吐症状の強い乳幼児~成人をみたら,ノロウイルス感染症を考える.
学びのポイント
●ノロウイルス胃腸炎は,毎年,秋から冬にかけて流行する.
●ノロウイルスの感染様式には,糞便や吐物に含まれるウイルスを経口的に摂取することによる経口感染,ウイルスを含む吐瀉物をエアロゾルとして舞い上げることによる塵埃感染,汚染された食材の喫食による食中毒がある.
▼定義
カリシウイルス科に属するノロウイルスによる感染症で,感染性胃腸炎をきたす.
▼病態
ノロウイルスは経口的に感染し,体内に侵入する.主に上部消化管の粘膜上皮細胞に感染し,絨毛・微絨毛の平坦化や萎縮をきたし,胃腸炎症状を呈する.
▼疫学
わが国では主に秋から冬にかけて流行するが,5月頃まで発症がある.感染力が非常に強く,医療施設,高齢者施設,保育所・幼稚園・学校などでしばしば流行する.糞便や吐物に多量に含まれるウイルスを経口的に摂取することによるヒト-ヒト経口感染が主体である.汚染された吐物がエアロゾルとして舞い上がると塵埃感染する.その他,河川水に含まれるウイルスが濃縮された二枚貝や,感染した調理者により汚染された食材の喫食による食中毒型の感染もある.
▼分類
ノロウイルスはgenogroupⅠ~Ⅴの遺伝子群に分類され,このうちgenogroupⅠ,Ⅱ,Ⅳにヒトへの病原性がある.
▼診断
感染性胃腸炎と臨床診断され,特に11~12月の初冬の発症であり,家族や施設内など全年齢層での嘔吐下痢症の流行があり,嘔吐症状が強く,迅速診断でロタウイルスが陰性の場合,ノロウイルス胃腸炎が疑われる.ノロウイルスの検査診断法としては,EIA法やイムノクロマト法によるノロウイルス抗原迅速診断と,ノロウイルス遺伝子を検出する遺伝子診断法がある.
▼感染制御・治療
ノロウイルスに対するワクチンの開発は試みられているが,現時点では実用化