疾患を疑うポイント
●伝染性単核球症が臨床的に重要.
●上記疾患では,発熱,咽頭炎,およびリンパ節腫脹を三徴とする.
学びのポイント
●Epstein-Barrウイルス(EBV)は,ヒトヘルペスウイルス4型に分類され,成人の90~95%にEBVに対する抗体価が陽性であるというきわめて普遍的なウイルス.
●EBVは咽頭より唾液などを介して侵入し,B細胞に感染し,B細胞を不死化し増殖させる.小児の場合,多くは不顕性感染,もしくは非特異的な上気道炎症状で経過するものの,時に伝染性単核球症を発症する.
●EBVは試験管内でB細胞に感染すると形質転換を起こし,無限の細胞増殖能を賦与する.EBV感染B細胞はnatural killer(NK)細胞,およびEBV特異的細胞傷害性T細胞により制御される.すなわち発癌ウイルスの側面をもち,実際に多くの悪性腫瘍とEBV感染との関連が示されている.
▼定義
Epstein-Barr(エプスタイン-バー)ウイルス(EBV)による感染症である.成人の大半はEBVに感染しているものの無症状である.初感染,およびEBVの再活性化に伴って,多彩な病態を呈する.
▼病態
初感染のなかには,①子宮内感染(まれ),②乳幼児期,あるいは小児期の感染(多くは不顕性感染),③伝染性単核球症,および④EBV関連血球貪食症候群などがある.臨床的には伝染性単核球症が最も重要である.さらにEBV感染症に伴う合併症としては,①アンピシリンの使用に伴う皮疹(アンピシリンに対する抗体が産生されることによる),②AIDSの患者に発症する口腔毛状白板症,③脾臓破裂(1,000例のうちの2例に合併,男性に多い),④上気道狭窄(リンパ節腫大,および粘膜の浮腫による),および⑤リンパ増殖性疾患,などがある.
➊伝染性単核球症
ほとんどの幼児において,EBVの初感染は無症状に経過する.わが国では乳幼児期に不顕