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治療

18 デング熱
dengue fever
島田 智恵
(国立感染症研究所・感染症疫学センター・主任研究官)

疾患を疑うポイント

●流行地への渡航歴(日本で発生している場合には訪問歴).

●発熱,頭痛(眼窩部痛),全身の筋肉痛や関節痛.

●全身性の発疹は,発熱から数日経過した頃に体幹から出現する.

学びのポイント

●ヒトからヒトへの感染はない.

●デングウイルスには5つの血清型があるが,このうちヒトでの感染が確認されているのは1~4型.

●異なる血清型のデングウイルスに感染した場合に重症化する可能性が高くなる.

●ヒトスジシマカは青森県以南の国内全域に生息しており,2014年には約70年ぶりに国内感染例が報告された.

●世界の人口の約半分が,デングウイルスに感染するリスクに曝されているといわれる.

▼定義

‍ デングウイルスによるウイルス性感染症である.

▼病態

 蚊媒介感染症であり,ネッタイシマカ(Aedes aegypti)やヒトスジシマカ(A. albopictus)により媒介される.

 約80%は不顕性感染.発症する場合,多くは3~7日(2~14日)の潜伏期間を経て発熱,頭痛,筋肉痛,皮疹などの症状を呈する.異なる血清型のデングウイルスに感染した場合に重症化することがあり,それは初回に感染した血清型に対する抗体が,別の血清型に対して感染増強とよばれる現象を生じることに起因している.

▼疫学

 媒介蚊は熱帯から温帯の広い範囲で生息しており,それら気候帯の多くの国で患者を認める.2016年にWHOへ報告された重症を含むデング熱は世界で300万人を超えた.国内では1940年代に西日本で流行があったが,その後2014年まで発生がなかった.媒介蚊対策などが強化され2015年以降は再び輸入例だけの報告となり,毎年200例前後で推移している.

▼分類

 デングウイルスに感染し症状が現れた場合,デング熱とよぶ.重症型デングは重度な出血傾向,血漿漏出傾向,臓器不全傾向を示し,デング熱の一部にみられる.著しい血小板減少と血漿漏出

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