学びのポイント
●ネッタイシマカによって媒介される発熱性疾患.肝不全による黄疸が病名の由来.
●有効性の高い生ワクチンが開発されており,アフリカやラテンアメリカの疾患常在地に渡航する場合,国際保健規則に基づき予防接種証明書の携行が義務づけられることがある.
▼定義
黄熱ウイルス(フラビウイルス科フラビウイルス属)を病原体とする発熱性疾患.
▼病態
病原体の自然宿主は熱帯地方に生息するサルと考えられ,ヤブカ属の蚊によって媒介される(森林型流行).一方,ヒトとネッタイシマカによって感染環が成立して,大きな流行が起きることがある(都市型流行).潜伏期は通常2~6日である.蚊の刺咬によって体内に侵入した病原体はウイルス血症を起こす.無症候性感染が多いとされるが,その割合は不明である.
重症例は二峰性の発熱,あるいは高熱が持続する経過を示す.黄疸が顕著となり,嘔吐,出血傾向,乏尿を伴うことが多い.多臓器不全(心臓,肝臓,腎臓)が死因となる.病理学的には肝臓は脂肪変性と小葉の中心壊死をきたし,Councilman(カウンシルマン)小体を認める.腎臓では尿細管壊死を認める.第5~10病日の極期にはせん妄などの精神神経症状を認めることもまれではない.コーヒー残渣様吐物や針刺入部の紫斑などに特徴づけられる出血傾向は肝不全と播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation:DIC)によると考えられる.血液・体液曝露によるヒト間の感染の報告はない.
▼疫学
黄熱はサハラ以南のアフリカ(34か国)とラテンアメリカ(13か国)の熱帯地方に常在している.病原体はアフリカ由来であるが,15~17世紀の奴隷貿易によってラテンアメリカに分布が拡大したと考えられている.2013年にはアフリカで130,000人の重症患者が発生し,78,000人が死亡したと推定されている.ア