疾患を疑うポイント
●発症前3週間以内にアフリカやラテンアメリカの熱帯地方に滞在歴があり,野生動物や患者の体液に接触歴がある発熱患者では本疾患を疑う.
学びのポイント
●感染症法の一類感染症に指定される公衆衛生上重大な疾患.
▼定義
特定のウイルス群(アレナウイルス,フィロウイルス科など)を病原体とする重篤な発熱性疾患である(表11-24図).患者の血液・体液に接触することで感染するリスクがある.
▼病態
病原体の宿主は野生動物や家畜である.患者の血液・体液が粘膜や損傷のある皮膚を汚染して感染する.潜伏期は通常2~21日である.発熱,頭痛,筋肉痛が前駆症状で,嘔吐,下痢などの消化器症状を伴うことが多い.高度のウイルス血症と生体反応の異常が病態の中心と考えられる.播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation:DIC)による出血症状や多臓器不全(心臓,腎臓,中枢神経)が直接の死因となる.
▼疫学
ラッサ熱は年間50,000人以上の患者が発生している.クリミア・コンゴ出血熱,南米出血熱の患者発生数は不明である.マールブルグ病,エボラ出血熱(エボラウイルス病)は散発的な流行を認める.日本国内では1987年にラッサ熱が1例(シエラレオネで感染)報告されている.二次感染を認めなかった.
▼診断
発症前21日以内に患者,あるいは疾患常在地に生息する宿主・媒介動物に接触した曝露歴があり,発熱性疾患が疑われる場合にはウイルス性出血熱も考慮する.マラリア,感染性下痢症,デング熱などが鑑別診断となる.実験室診断は国立感染症研究所において実施される.血清からRT-PCR法による病原体遺伝子の検出による.
一類感染症に指定されており,診断した医師は最寄りの保健所に届け出る.
▼治療
患者(疑似症患者,無症候性病原体保有者を含む)には,都道府県知事により特定または