学びのポイント
●典型的なCJDは高齢者に多く,2~3か月で進行する亜急性の認知障害を呈する.しかし,緩徐な経過や,精神症状・小脳失調で発症する非典型例もあるため,神経疾患の鑑別診断として常に考慮する.
●有効な治療法はなく,診断確定後は主に対症療法となるため治療可能な疾患との鑑別が重要.
●プリオン病の正確な診断は,不用意な医療行為による医原性感染の予防のためにも重要である.プリオンの不活化は容易ではないため医療機器を汚染させないよう努めること.
▼定義
異常な構造のプリオン蛋白の中枢神経系への蓄積により神経細胞の機能異常・細胞死が生じる致死性の神経変性疾患である.
▼病態
中枢神経系には正常な構造のプリオン蛋白(prion protein:PrP)が豊富に存在するが,まれにPrPの構造が変化し異常型プリオン蛋白(PrPSc)が生じる.PrPScは周囲の正常PrPの構造変化を誘発しPrPScに変換することで増殖し,最終的に中枢神経系全体に蓄積し広範な神経細胞死をもたらす.末梢でも,リンパ系組織や神経節を中心にPrPScは増殖しうる.PrPScが自然発生したと考えられるものを孤発性プリオン病とよぶ.脳外科手術歴・角膜移植歴・牛海綿状脳症流行時のイギリスへの渡航歴があるなど,PrPScで汚染された組織を取り込んだと考えられるものを獲得性プリオン病,PrP遺伝子の変異により構造変化が生じやすいことが背景にあるものを遺伝性プリオン病とよぶ.常染色体性優性遺伝様式をとり,浸透率は変異ごとに異なる.
▼疫学
世界的に100万人あたり年間1~2人の発症率.日本では3/4程度は孤発性Creutzfeldt-Jakob(クロイツフェルト-ヤコブ)病(CJD)で60歳以上に発症ピークがあるが,若年発症もまれにみられる.20%弱が遺伝性プリオン病.獲得性は5%以下でほとんどが硬膜移植後CJDである.CJD
関連リンク
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