診療支援
治療

8 抗ウイルス薬
antivirals
大曲 貴夫
(国立国際医療研究センター病院・国際感染症センター・センター長)

 ビダラビンはプリンヌクレオシドアナログであり,単純ヘルペスウイルス,水痘・帯状疱疹ウイルスに対する活性をもつ.代謝されてウイルスのDNA合成を阻害する.単純ヘルペス脳炎,単純ヘルペスウイルスによる粘膜皮膚感染,帯状疱疹,さらには新生児の単純ヘルペスウイルス感染の治療に有効であることが証明されている.しかし現在は,有効性がより高く投与が容易なアシクロビルの静注製剤が主流である.

 アシクロビルは単純ヘルペスウイルスや水痘・帯状疱疹ウイルスなどに対して有効性をもつ.アシクロビルはチミジンキナーゼで一リン酸化されたあと,宿主細胞性キナーゼで三リン酸体となり,ウイルスDNAポリメラーゼでウイルスDNAに取り込まれ,それ以上のDNA伸長を阻害してウイルスの増殖を防ぐ.単純ヘルペスウイルスによる脳炎・髄膜炎の治療や造血幹細胞移植時における発症抑制,水痘,帯状疱疹の治療などに使われる.非常に忍容性が高く毒性は低い.頻度の高い副作用は薬物の結晶化による腎不全である.

 バラシクロビルは肝臓でエステラーゼによってバリンと抗ウイルス作用をもつアシクロビルとに加水分解されて薬効を発揮する.アシクロビルよりも生物学的利用率が3~5倍高い.ガンシクロビルはアシクロビルのアナログであり,サイトメガロウイルスに対してアシクロビルよりもはるかに高い活性をもつ.サイトメガロウイルスのDNAポリメラーゼを阻害し,ウイルスDNAに取り込まれてその伸長を停止させる.ガンシクロビルはサイトメガロウイルスによる網膜炎,肺炎,消化管感染などに広く用いられている.バルガンシクロビルはガンシクロビルのL-バリンエステルである.プロドラッグとして経口でよく吸収され,腸管および肝臓で加水分解されガンシクロビルへと変化する.

 ファムシクロビルは,脱アセチル化されることにより,6-デオキシペンシクロビルを経てペンシクロビル

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