診療支援
治療

(1)好酸球性食道炎
eosinophilic esophagitis(EoE)
今枝 博之
(埼玉医科大学教授・消化管内科)

▼定義

 嚥下障害,胸のつまり感,胸焼けなどの症状が持続し,食道粘膜の生検で好酸球浸潤が15個以上/HPFみられる疾患である〔第4章の,「好酸球性消化管疾患」の項()参照〕.

▼病態

遺伝的要因

 家族内集積例の報告が多数あり,また80%程度の患者は30~50歳の男性であるため,なんらかの遺伝的要因の関与が考えられている.

環境的要因

 春から秋の暖かい季節に発症しやすいことが示唆され,空中のカビや花粉が発症に関与している可能性がある.また,食物抗原をなくしたエレンタールなどの完全成分栄養食に切り替えたところ,ほとんどの例で1か月程度で改善するため,アレルギー反応誘発因子は食事と考えられる.

 主に食物に対するT helper 2(Th2)系のアレルギー反応によって粘膜上皮内や固有層を中心に好酸球が浸潤し,食道運動障害や知覚異常が誘発される.

 一方で胃酸の生理的な範囲での食道内逆流によりタイトジャンクションが傷害されて,上皮バリア機構が破綻してアレルゲンが侵入しやすくなる.

▼疫学

 欧米では24~55人/10万人(0.024~0.055%)と報告されている.わが国では0.01%と報告され,欧米に比べると低率である.

 わが国での好発年齢は欧米よりもやや高く,40~50歳のあたりに発症ピークがあり,男性が80%と多い.

▼分類

 海外ではPPIにより病理組織像,内視鏡所見,自覚症状の寛解が得られる場合にはPPI反応性食道好酸球浸潤(PPI-responsive esophageal eosinophilia:PPI-REE)とし,PPIによる治療に反応しないものをEoEと分けていた.しかし,両者は類似していることから,最近の欧米のガイドラインではPPI-REEもEoEに含むことにされた.わが国でも,両者は同じ診断基準に含まれている.

▼診断

 症状は嚥下障害が多く,ついで胸焼け,心窩部痛,嘔

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