疾患を疑うポイント
●気管支喘息患者には鼻症状の問診が重要.
●特に難治性喘息では鼻炎の合併を疑う.
学びのポイント
●上気道と下気道は解剖学的,生理学的,病理学的に共通する部分が多く,上気道疾患であるアレルギー性鼻炎〔本章の→参照〕と下気道疾患である気管支喘息〔第2章の→参照〕を包括的にone airway,one diseaseとしてとらえ診療を行う.
▼疫学
喘息とアレルギー性鼻炎の合併頻度に関しては多くの報告がなされている.研究を行う地域や,両疾患の診断根拠を何にするかなどにより,報告にばらつきはあるが,おおむね喘息患者の半数以上が鼻炎を合併しており,逆に鼻炎患者の30~40%程度が喘息を合併していると考えられる.
本邦で行われた,2万名以上の喘息患者に対するアンケート調査では,アレルギー性鼻炎の合併頻度は約60%以上の高率であった.
患者のなかには,こちらから症状を聞いてみて改めて鼻炎を合併していることに気づく者もあり,喘息診療においては,鼻炎の合併を常に念頭におくことが重要である.
▼鼻炎の合併が喘息症状に与える影響
アレルギー性鼻炎の合併により,喘息の症状は悪化する.鼻炎合併喘息患者は非合併喘息に比較して,喘息発作の発生頻度ならびに発作による救急外来の受診回数が有意に高く,短時間作用型β2刺激薬や経口ステロイドの使用量が多い.
鼻炎が喘息症状を増悪させる機序としては,鼻閉による口呼吸のため加湿・加温されない吸気が下気道を刺激する,上気道で産生された炎症性メディエーターが後鼻漏となって下気道に流入する,上気道で産生されたサイトカインなどが血流に乗って骨髄へ達し好酸球の分化増殖を促進するなどが考えられている.
▼鼻炎合併喘息の包括的治療
鼻炎合併喘息の治療を考えるとき,それぞれに対する治療に加えて,両者に共通する病態を包括的に治療することで相乗的に治療効果が増すことが期待できる
関連リンク
- 新臨床内科学 第10版/2 花粉症,アレルギー性鼻炎
- 新臨床内科学 第10版/【1】気管支喘息
- 治療薬マニュアル2024/モンテルカストナトリウム《キプレス シングレア》
- 今日の治療指針2023年版/ブデソニド/グリコピロニウム臭化物・ホルモテロールフマル酸塩水和物
- 今日の治療指針2023年版/喘息・COPDオーバーラップ(ACO)
- 今日の治療指針2023年版/“One airway,one disease(鼻炎合併喘息)”の包括的治療
- 今日の治療指針2024年版/喘息・COPDオーバーラップ(ACO)
- 今日の治療指針2024年版/職業性アレルギー
- ジェネラリストのための内科診断リファレンス/5 慢性咳嗽
- ジェネラリストのための内科診断リファレンス/12 気管支喘息
- 新臨床内科学 第10版/6 職業性アレルギー
- 新臨床内科学 第10版/2 咳喘息(アトピー咳嗽も含む)
- 今日の診断指針 第8版/慢性閉塞性肺疾患(COPD)