診療支援
治療

8 急性リウマチ熱
acute rheumatic fever(ARF)
武井 修治
(鹿児島大学名誉教授・小児科)

疾患を疑うポイント

●原因不明の発熱.

●先行するGAS感染症(咽頭扁桃炎)の存在.

●膝や足などの移動性大関節炎,輪状紅斑.

●心雑音の出現.

学びのポイント

●急性期に発熱,関節炎(移動性),舞踏病,輪状紅斑,皮下結節,心雑音(心炎)が出現.

●診断にはJonesの改訂基準(2015)が有用.

●急性期治療は,ペニシリン(PC)系抗菌薬(除菌)とアスピリン(抗炎症),ステロイド薬(心炎と重症舞踏病).

●回復期には,PCの長期予防投与が必要.

▼定義

‍ A群レンサ球菌(group A streptococci:GAS)感染2~3週後に続発する,関節炎,心炎,皮下結節,輪状紅斑,舞踏病などを特徴とする非化膿性炎症疾患.

▼病態

 GASの抗原成分と抗原類似性のあるヒト組織を標的とした免疫応答と考えられ,要因としてGASのM蛋白,宿主の疾患感受性(HLA-DR7やHLA-DR4)や生活環境(衛生状態,栄養状態)の報告がある.

▼疫学

 5~15歳の小児に好発し,男女差はない.本邦では激減したが,発展途上国では現在でも10例/人口10万人以上の発生率.

▼診断

‍ Jonesの改訂診断基準(2015)を用いる(表13-13).GAS先行感染の証明を必須とし,主症状と副症状から診断する.また,2つの地域基準があるが,本邦では低侵襲地域の基準を用いて診断する.

GAS先行感染の証明

 単回測定で,抗ストレプトリジンO(anti-streptolysin-O:ASO)抗体または抗ストレプトキナーゼ(anti-streptokinase:ASK)抗体が陽性,あるいは2週間間隔で抗体価≧4倍の増加で,GAS先行感染ありと判断する.一方,咽頭培養,迅速抗原テストの陽性率は低く(30%),陽性であってもASO/ASK陰性の場合は,健康保菌者の可能性がある.

主症状

 心炎(50%)により僧帽弁や大動脈弁が障害され,心不全と

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