診療支援
治療

(1)高安動脈炎
Takayasu arteritis
大村 浩一郎
(京都大学大学院准教授・臨床免疫学)

疾患を疑うポイント

●小児から若年の女性で発症が圧倒的に多い.

●微熱や頸部痛,易疲労感が初期症状.

●進行すると失神や血圧の左右差が出てくる.

学びのポイント

●大動脈とその第1分枝に炎症が起こり,血管狭窄・閉塞を起こす.進行すると脳梗塞や大動脈弁閉鎖不全症をきたす.

●高齢男性の高安動脈炎も存在するが,基本的には若年女性の疾患.

●非特異的で比較的軽い症状のため診断が遅れ,進行して診断される患者が多い.

●膠原病類縁疾患であるが,自己抗体は認められない.

▼定義

 大動脈およびその主要分枝,肺動脈に生じる原因不明の大血管炎であり,血管狭窄に伴う諸症状を呈する.若年女性に多発し,非特異的で比較的軽い症状で発症するため進行してから発見されることが多く,脈なし病ともよばれた.「大動脈炎症候群」は高安動脈炎を含んだより広い用語であるが現在はほぼ使われなくなっている.

▼病態

 大動脈は内膜,中膜,外膜の3層からなるが,本疾患は外膜および中膜外層の栄養血管が病変の主座であるとされている.急性期には造影CT後期相や造影MRIで大動脈の外膜側に造影効果がみられ,進行すると大動脈壁全体の腫脹が観察される.慢性期になると血管の狭窄および動脈瘤の形成がみられる.

▼疫学

 わが国には約5,000人の患者がおり,男女比は1:9と女性に多く,通常40歳以下で発症する.

▼分類

 罹患血管の範囲によりⅠ~Ⅴ型に分類される〔詳細は難病情報センターwebサイト「高安動脈炎(指定難病40)」を参照〕.Ⅴ型が最も広範囲.

▼診断

 若年女性で長期間続く微熱,倦怠感,血液検査で炎症反応(CRPまたは赤沈亢進)もしくは立ちくらみ,腕のだるさ,頸部痛,血圧の左右差(10mmHg以上)や脈圧の低下などから本症を疑い,造影CT,造影MRI,FDG-PETなどの画像診断で大動脈および第1分枝の壁の造影効果,壁肥厚,血管狭窄・閉塞を証明することで診断さ

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