疾患を疑うポイント
●非常にまれな疾患であるために,最初からTRAPSを疑う必要はない.しかし幼少期から原因不明の1週間以上続く発熱を繰り返す症例においては,TRAPSを疑う必要がある.
●発熱期間が,12~72時間ほどである家族性地中海熱と比べて長い.
▼定義
周期熱,発疹,漿膜炎,関節痛などを主症状とする,常染色体優性遺伝形式の自己炎症性疾患.1999年,McDermottらにより,Ⅰ型TNF受容体をコードするTNFRSF1A遺伝子が責任遺伝子として同定された.わが国においてはこれまで数十例の報告がある.
▼病態
TRAPSの詳しい発症機序は不明.当初はTNFRSF1A遺伝子がコードするTNF受容体が,変異により細胞膜表面にとどまるためにTNFからの反応が続き過剰な炎症が起こると考えられていた.現在では,変異TNF受容体が小胞体に蓄積し,ミトコンドリアからの活性酸素産生が亢進し,最終的にはMAPKが活性化状態になり,過剰炎症を引き起こすと考えられている.
▼診断
主に幼少期に発症し,1週間以上,時には数週間以上持続する発熱発作が特徴.典型的には弛張熱を認める.そのほかに,発疹,腹痛,筋肉痛,結膜炎,眼窩周囲浮腫などの症状を呈する.長期的には炎症持続によりアミロイドーシスを合併しうる.
ほぼすべての症例において発作時にCRPなどの炎症反応の上昇を認める.
臨床症状より,TRAPSを疑い,TNFRSF1A遺伝子の検査により疾患関連変異を認めることにより診断される.診療ガイドラインの診断手順を表13-31図に示す.全身型若年性特発性関節炎や成人Still(スチル)病,ほかの自己炎症性疾患〔CAPS(cryopyrin-associated periodic syndrome),MKD(mevalonate kinase deficiency),家族性地中海熱,PFAPA(periodi
関連リンク
- 治療薬マニュアル2024/エタネルセプト(遺伝子組換え)《エンブレル》
- 治療薬マニュアル2023/カナキヌマブ(遺伝子組換え)《イラリス》
- 治療薬マニュアル2024/カナキヌマブ(遺伝子組換え)《イラリス》
- 今日の皮膚疾患治療指針 第5版/Weber-Christian症候群
- 今日の治療指針2023年版/ダラツムマブ(遺伝子組換え)
- 臨床検査データブック 2023-2024/抗HMGCR抗体
- 今日の治療指針2023年版/成人発症スチル病
- 新臨床内科学 第10版/9 ウェーバー-クリスチャン病
- 新臨床内科学 第10版/3 X連鎖リンパ増殖症候群
- 新臨床内科学 第10版/2 家族性地中海熱
- 新臨床内科学 第10版/4 高IgD症候群
- 今日の診断指針 第8版/自己炎症性疾患
- 新臨床内科学 第10版/6 PAPA症候群(化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群)