▼概説
高血圧や狭心症,上室性頻拍症などに広く処方されていることから,中毒の原因薬物となる可能性も高い.大量内服の際にはしばしば難治性の徐脈と低血圧から致死的となる.
▼毒性のメカニズム
βアドレナリン受容体には,主に心筋の収縮速度を調節しているβ1アドレナリン受容体と血管や気管支平滑筋の緊張を調節しているβ2アドレナリン受容体,心筋の変圧作用などを調節しているβ3アドレナリン受容体がある.どの受容体に作用するかで薬剤ごとの特徴をもつが,どのβ遮断薬にもβ1アドレナリン受容体遮断作用があるので,中毒の際には徐脈はほぼ必発である.
▼中毒症状
服用した薬剤が本来もつ薬理作用が増強すると考えればよい.β1遮断作用による徐脈や房室ブロック,β2遮断作用による低血圧である.プロプラノロールやラベタロールはNaチャネル阻害作用をもつので,QRS延長やtorsades de pointes(トルサード・ド・ポアンツ)などの心室性不整脈を示すこともある.
▼治療
➊全身管理
徐脈,低血圧といったきわめて重篤な循環障害を起こすので素早い対処が必要である.気道確保,呼吸・循環に対する一般的な管理を二次救命処置(advanced cardiac life support:ACLS)に準じて行う.徐脈と低血圧に対しては細胞外液の急速輸液とアトロピン薬の投与を行うが,アトロピンが無効のことも多いため体表ペーシングや経静脈的ペーシングを考慮する.循環動態が維持できなければVA-ECMOを導入する.
➋吸収の阻害
内服1時間以内では胃洗浄,活性炭を考慮する.
➌排泄の促進
ほとんどのβ遮断薬は脂溶性で,分布容積と蛋白結合率が高いため有効な手段はない.
➍解毒薬,拮抗薬
β受容体遮断作用に拮抗させるカテコールアミン,グルカゴン,ホスホジエステラーゼ阻害薬の使用が考えられる.グルカゴンはβ1アドレナリン受容体をバイパス
関連リンク
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