診療支援
治療

(2)危険ドラッグ
new psychoactive substances(NPS)
小林 憲太郎
(国立国際医療研究センター病院・救命救急センター救急科医長)

▼概説

 危険ドラッグとは,法規制を逃れるために既存の規制薬物の化学構造に手を加えて新しい化学物質として合成されたものである.

 「危険ドラッグ」という呼称は,厚生労働省と警察庁が規制薬物と類似した化学物質を含有した植物片などについて,危険な薬物であるという内容にふさわしい呼称として2014年につけられたものであり,それまでは「合法ドラッグ」「脱法ドラッグ」「脱法ハーブ」などとよばれていた.1980年代から欧米を中心に流通,日本には1990年代後半からみられるようになった.

 危険ドラッグの形状は多くの場合植物片,液体および白い結晶状のいずれかの状態で使用されていることが多い.植物片についてはその植物自体に薬物が含まれている訳ではなく,植物片に薬物を吸着させたものを燃焼し吸煙することで成分が体内に取り込まれている.液体状のものは内服もしくは経肛門にて摂取されている.白い結晶状のものはアルミホイルの上で加熱したり,タバコの先端に少量付着させタバコの煙とともに吸煙して使用されている.

 日本では合成カンナビノイドが広く流通したが,種類は多岐にわたっており国際的には“new psychoactive substances(NPS)”(新精神活性物質)という名称が用いられている(表14-14)

▼毒性のメカニズム

 危険ドラッグには表14-14のようにさまざまな種類があり,それぞれ毒性をもたらすメカニズムは異なる.合成カンナビノイドについては,大麻と同じく体内に存在するCB受容体に作用することが知られているが,一部の合成カンナビノイドは大麻の成分であるΔ9-THCよりも作用強度が強いことが知られている.合成カチノンはアンフェタミンの類似構造をもち,作用はMDMAに類似しているとされている.

▼中毒症状

 合成カンナビノイドでは不穏,興奮,幻覚,恐怖感など多彩な精神・神経症状がみられることが多

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